【小児科医が解説】年長さんで忘れちゃいけない予防接種リスト!小学校入学前に知っておくべき全て|杉並区・荻窪 長田こどもクリニック
インターネットで医療情報を検索する中で、各施設の先生方の個人的な意見も多く、どこまでが客観的な事実なのか分かりにくい、と感じたことはありませんか?私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、そうした保護者の皆さまの不安に応えるため、明確なエビデンス(科学的根拠)に基づいたブログ作成を心がけています。この記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文レビューや、日本の公的機関の推奨を基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、就学前の予防接種について徹底解説します。
目次
はじめに:なぜ「年長さん」の今、予防接種が大切なの?
お子さまが「年長さん」になるこの時期は、心も体も大きく成長し、小学校入学への期待に胸を膨らませる、特別な一年ですね。実は、この大切な時期は、感染症予防の観点からも**「最後の総仕上げ」**とも言える、非常に重要なタイミングです。
赤ちゃん時代に受けた予防接種の効果は、残念ながら永遠には続きません。時間と共に、ウイルスや細菌と戦う力(抗体価)は少しずつ弱まっていきます。小学校という、これまでよりもはるかに大規模な集団生活が始まる前に、弱まった免疫をもう一度しっかり高めておく。それが、年長さんで受ける予防接種の最大の目的なのです。
小学校入学前に必須!必ず接種したい2つのワクチン
就学前のこの時期に、国が費用を負担して接種を勧める**「定期接種」**として、絶対に忘れてはならないワクチンが1つあります。また、多くの小児科医が強く推奨する**「任意接種」**のワクチンも1つあります。
① 麻しん風しん(MR)混合ワクチン【第2期】
これは、法律で定められた**定期接種**です。年長さんの1年間(4月1日から翌年3月31日まで)に公費(無料)で接種できます。
- なぜ必要?:1歳で受けた第1期のワクチンだけでは、数%のお子さまに十分な免疫がつかなかったり、時間と共に免疫が弱まったりすることがあります。2回目の接種は、その免疫を確実なものにし、生涯にわたる強固な抵抗力を獲得するための「ブースター(追加免疫)効果」を目的としています。2回接種することで、95%以上のお子さまが十分な免疫を獲得できます。
- 麻しん(はしか)の恐ろしさ:非常に感染力が強く、肺炎や脳炎といった重い合併症を引き起こす、命に関わる病気です。
- 風しんの恐ろしさ:お子さま自身は比較的軽症で済むことが多いですが、免疫のない妊婦さんが感染すると、お腹の赤ちゃんに心臓病や難聴、白内障などの重い障害(先天性風しん症候群)を引き起こす可能性があります。お子さまが感染しないことが、社会全体を守ることにも繋がります。
② おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ワクチン【2回目】
こちらは**任意接種**(自費)ですが、日本小児科学会が強く推奨している、MRワクチンと並んで非常に重要なワクチンです。
- なぜ2回必要?:1回の接種だけでは、数年で免疫が弱まり、小学校に入ってから感染してしまうお子さまが少なくありません。2回目の接種は、MRワクチン同様、免疫を強化し、長期的な予防効果を確実にするために行います。
- 「ただの風邪」ではない合併症のリスク:おたふくかぜは、耳の下が腫れるだけの病気ではありません。髄膜炎(ずいまくえん)や、治療法のない重度の難聴(ムンプス難聴)、精巣炎・卵巣炎(将来の不妊の原因になりうる)といった、深刻な合併症のリスクがあります。ワクチンで確実に防ぐことが、お子さまの将来を守ることに繋がります。
同時接種も検討を!受けておくと安心な任意接種ワクチン
MRワクチンやおたふくかぜワクチンと同時に、追加接種が推奨されているワクチンがあります。乳幼児期に4回接種した四種混合ワクチンの効果が、ちょうど弱まってくるのがこの時期だからです。
① 三種混合(DPT)ワクチン
ジフテリア・百日せき・破傷風のワクチンです。特に、小学校低学年で流行することが多い**「百日せき」**の免疫を強化する目的で、就学前の追加接種が日本小児科学会から推奨されています。百日せきの咳は非常に長く続き、体力を消耗します。また、小さなお子さまが感染すると、無呼吸発作などを起こし重症化することがあります。お兄さんお姉さんになったお子さまが、下の赤ちゃんにうつさないためにも重要です。
② ポリオ(不活化ポリオ)ワクチン
百日せきと同様に、4回接種したポリオの免疫も時間と共に低下します。ポリオは根絶されたわけではなく、世界ではまだ流行している地域があります。人の行き来がグローバルになった現代において、確実な免疫を維持するために、5回目の追加接種が推奨されています。
5回目の追加接種として、四種混合ワクチンは日本では承認されていません。そのため、百日せき対策には「三種混合(DPT)」、ポリオ対策には「不活化ポリオ(IPV)」をそれぞれ単独で接種する必要があります。
年長さんの予防接種 Q&Aコーナー
この時期の予防接種について、保護者の皆さまからよくいただくご質問にお答えします。
A1. 乳幼児期に獲得した免疫(抗体価)は、5〜10年かけて徐々に低下していきます。小学校入学という、これまで以上に密な集団生活が始まる前に、もう一度ワクチンで免疫を刺激し、感染症にかかりにくい、また、もし感染しても重症化しないレベルまで抵抗力を引き上げておく(ブースター効果)のに、最適なタイミングだからです。
A2. 心配いりません。気づいた時点ですぐにかかりつけ医に相談してください。MRワクチンの第2期は、小学校入学前までなら公費で受けられます。万が一、期間を過ぎてしまっても、自費にはなりますが接種は可能です。忘れたままにせず、できるだけ早く接種してあげることが大切です。
A3. はい、大丈夫です。複数のワクチンを同じ日に接種する「同時接種」は、それぞれのワクチンの効果を弱めたり、副反応を強めたりすることはないと、世界中の研究で安全性が確認されています。日本小児科学会も、必要な免疫をできるだけ早くつけるために、同時接種を推奨しています[1]。何度も通院する負担を減らせるという大きなメリットもあります。
A4. 明らかな発熱(通常は37.5℃以上)がある場合や、咳がひどくて元気がない場合は、接種を延期するのが原則です。一方で、軽い鼻水や咳だけで、熱がなく機嫌も良く、普段通りに過ごせている場合は、接種可能なことがほとんどです。最終的には診察した医師が判断しますので、自己判断せずに、まずはクリニックにご相談ください。
長田こどもクリニックの予防接種:計画から接種後まで、親子に寄り添います
私たちは、予防接種が、お子さまの健康な未来を守るための「親子の大切なイベント」であると考えています。流れ作業のように接種を行うのではなく、保護者の皆さま一人ひとりの疑問や不安に、時間をかけてお応えすることを大切にしています。
- お子さまの母子健康手帳を拝見し、接種漏れがないか、最適な接種スケジュールは何かを一緒に確認・計画します。
- なぜこのワクチンが必要なのか、どんな副反応の可能性があるのか、接種後の注意点は何か、一つひとつ丁寧にご説明します。
- 注射の痛みを少しでも和らげる工夫をしながら、お子さまが安心して接種を受けられるよう、スタッフ一同でサポートします。
お仕事やご兄弟の送迎などで、日中の受診が難しい保護者の皆さまにも安心してご利用いただけるよう、当院は柔軟な診療時間とアクセス環境を整えています。
- 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
- 土曜日も、13時まで診療
- クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備
小学校入学という大きな節目を、万全の健康状態で迎えられるよう、ぜひお早めにご相談ください。
長田こどもクリニック
杉並区荻窪の小児科・アレルギー科