【小児科医が徹底解説】予防接種後の熱、いつまで続く?受診の目安と解熱剤の正しい使い方|杉並区・荻窪 長田こどもクリニック
インターネットで医療情報を検索する中で、各施設の先生方の個人的な意見も多く、どこまでが客観的な事実なのか分かりにくい、と感じたことはありませんか?私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、そうした保護者の皆さまの不安に応えるため、明確なエビデンス(科学的根拠)に基づいたブログ作成を心がけています。この記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文レビューや、日本の公的機関の推奨を基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、予防接種後の発熱について徹底解説します。
目次
はじめに:予防接種後の熱、心配ですよね
お子さまの健やかな成長を願って受けさせる予防接種。しかし、接種後に熱が出ている我が子を見ると、「大丈夫かな?」「つらそうでかわいそう…」と、心配でたまらない気持ちになりますよね。特に初めての予防接種では、不安が尽きないことと思います。
結論から言うと、予防接種後の発熱は、ほとんどの場合、体が正常に免疫を獲得しようとしている証拠であり、心配する必要はありません。 とはいえ、いつまで続くのか、何度まで上がるのか、病院へ行くべきかどうかの判断は難しいものです。この記事では、そんな保護者の皆さまの不安を解消するため、「予防接種後の熱」に関するあらゆる疑問に、科学的根拠に基づいて徹底的にお答えします。
なぜ熱が出るの?体の「免疫トレーニング」の仕組み
予防接種後に熱が出るのは、決してワクチンに「悪いもの」が入っているからではありません。これは、お子さまの体が、ワクチンによって持ち込まれた病原体のかけら(抗原)を「異物だ!」と認識し、それと戦うための免疫システムを総動員させているサインなのです。
- ワクチンを接種すると、体の中に病原体の“設計図”や“かけら”が入ってきます。
- 免疫細胞がそれを発見し、「敵の情報を入手したぞ!」と警報を出します。
- この警報物質(サイトカインなど)が脳の体温調節中枢に働きかけ、体温を上げることで、免疫細胞がより活発に働ける環境を作ります。これが「発熱」の正体です。
- 熱が出て活発になった免疫細胞は、敵の情報を記憶し、それに対抗するための武器(抗体)を作り始めます。
つまり、発熱は、お子さまの体が未来の本当の感染症と戦うための準備を、一生懸命行っている証拠なのです。
いつからいつまで?ワクチンごとの発熱データ
「いつ熱が出て、いつまで続くのか」は、ワクチンの種類によってある程度の傾向があります。ここでは、乳幼児期に接種する主なワクチンの公式な添付文書データを基に、具体的な頻度と時期を見ていきましょう。
ワクチンの種類 | 発熱(37.5℃以上)の頻度 | 主な発熱時期 | 特記事項 |
---|---|---|---|
ヒブ(アクトヒブ®︎) | 約33%[1] | 接種当日〜翌日 | 乳幼児ワクチンのデビューで経験することが多い副反応です。 |
小児用肺炎球菌(プレベナー13®︎) | 約74%[2] | 接種当日〜翌日 | 他のワクチンと比べて発熱の頻度が高いのが特徴です。38℃以上の発熱も約42%に見られます。 |
四種混合(DPT-IPV) | 約64%[3] | 接種当日〜翌日 | 肺炎球菌ワクチンと同時に接種することが多く、発熱の原因がどちらか特定は難しいですが、一般的な副反応です。 |
B型肝炎 | 約14%[4] | 接種当日〜翌日 | 他のワクチンに比べて発熱の頻度は比較的低めです。 |
ロタウイルス(経口) | 約7〜9%[5] | 接種後数日以内 | 飲む生ワクチンのため、発熱の他に、ぐずり、嘔吐、下痢などの症状が出ることがあります。 |
MR(麻しん風しん混合) | 約28%[6] | 接種後5〜14日 | 生ワクチンのため、接種後しばらく経ってから発熱するのが最大の特徴です。「忘れた頃にやってくる熱」と覚えておきましょう。 |
インフルエンザ | 10〜35%[7] | 接種当日〜翌日 | 特に2歳未満のお子さまで頻度が高い傾向にあります。 |
このように、ほとんどの不活化ワクチンは接種後24時間以内に発熱し、1〜3日で解熱します。一方で、MRワクチンのような生ワクチンは、体内でウイルスがゆっくり増えるため、1〜2週間後に発熱するという違いがあることを知っておくと、慌てずに対処できます。
お家でできること:発熱時のホームケア完全ガイド
お子さまが熱を出した時、ご家庭でできるケアの基本は、お子さまが少しでも快適に過ごせるようにサポートしてあげることです。
- 水分補給を最優先に:熱が出ると、汗をかいたり呼吸が早くなり体から水分が失われやすくなります。お子さまが欲しがるものを、少量ずつこまめに与えましょう。母乳やミルクは立派な水分補給です。
- 衣服の調整:熱が上がり始めで寒がっている時は暖かく、熱が上がりきって暑がっている時は涼しくしてあげましょう。汗をかいたら、こまめに着替えさせてください。
- 体を冷やすタイミング:熱があるからといって、冷やす必要はありません。お子さまが暑がってつらそうにしている場合に、首の付け根、脇の下、足の付け根など、太い血管が通っている場所を冷たいタオルなどで冷やしてあげると、気持ちよく過ごせることがあります。
- 食事は無理強いしない:食欲がなければ、無理に食べさせる必要はありません。水分さえ摂れていれば大丈夫です。ゼリーやアイス、うどんなど、消化が良く、本人が食べたがるものを与えましょう。
解熱剤(アセトアミノフェン)の正しい使い方
解熱剤は、病気を治す薬ではなく、あくまで一時的に熱を下げて、つらい症状を和らげるための「お助けアイテム」です。使うべきかどうかの判断基準は、体温の数字ではなく、お子さまの全身状態です。
熱が高くても、比較的元気に遊んでいたり、水分が摂れていたりするなら、急いで使う必要はありません。以下のような場合に、使用を検討しましょう。
- 熱のせいでぐったりして元気がない
- つらくて眠れない
- 水分を摂るのを嫌がる
一般的に、小児科では安全性の高い「アセトアミノフェン」という成分の解熱剤が処方されます。医師の指示通りの量を、6時間以上あけて使用してください。
【重要】これはただの副反応?危険なサインの見分け方
予防接種後の発熱で最も大切なことは、それが「ワクチンの副反応によるもの」なのか、それとも「たまたま同じタイミングでかかった、別の感染症によるもの」なのかを見極めることです。以下のサインが見られた場合は、副反応の範囲を超えている可能性があります。夜間や休日であっても、医療機関を受診してください。
- 48時間以上続く発熱(MRワクチンなどは熱発が続くこともあります)
- けいれん(ひきつけ)を起こした
- 意識がはっきりしない、ぐったりして呼びかけに反応が鈍い
- 呼吸が速い、苦しそう
- 水分が全く摂れず、おしっこが半日以上出ていない
- 嘔吐を繰り返す・血便
- 発疹が全身に広がっている(接種部位の赤みとは違う)
予防接種後の発熱 Q&Aコーナー
A1. 入浴は問題ありません。ただし、熱がある時や、元気がなくぐったりしている時は、無理をしてお風呂に入れる必要はありません。ただし絶対にお風呂に入れてはいけないということもありません。
A2. 熱が出るのは、免疫系が活発に働いている証なのですが、熱が出ていなくても免疫がつかないということはありません。発熱の有無には個人差があり、効果を判断する指標にはなりませんので、心配しないでください。
A3. ほとんどの場合、問題なく接種できます。予防接種後の発熱は、病的な反応ではなく、正常な免疫応答の範囲内だからです。ただし、他に気になる症状があった場合は、次の接種の際に医師に伝えてください。
長田こどもクリニックの考え方:不安な時こそ、頼れるかかりつけ医へ
この記事で様々な情報をお伝えしました。当院では、予防接種の際には、起こりうる副反応について具体的にご説明し、どのような場合に連絡・受診が必要か、ご家庭ごとの状況に合わせてお話しすることを心がけています。そして、万が一、接種後に不安な症状が出た際には、いつでもご相談いただける体制を整えています。
お子さまの急な発熱は、時間を選びません。当院は、お仕事などで日中の受診が難しい保護者の皆さまにも安心してご利用いただけるよう、柔軟な診療時間とアクセス環境を整えています。
- 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
- 土曜日も、13時まで診療
- クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備
予防接種後の不安な時間も、私たちは皆さまと共に乗り越えたいと考えています。いつでも頼れるかかりつけ医として、杉並区荻窪でお子さまとご家族の健康をサポートします。
参考文献
長田こどもクリニック
杉並区荻窪の小児科・アレルギー科