赤ちゃんのおへそがじゅくじゅく…臍肉芽の最新治療は「塩」?硝酸銀との違いを解説
生後2週間〜1ヶ月健診の頃、「赤ちゃんのへその緒が取れたのに、なかなか乾かない」「おへその中から赤いお肉のようなものが出ている」と心配されて来院される方が多くいらっしゃいます。
これは「臍肉芽(さいにくげ)」と呼ばれる状態で、新生児期には比較的よく見られるトラブルの一つです。「おへそを焼く治療が必要なの?」と不安に思う保護者の方も多いですが、実は医学の進歩により、治療の常識は大きく変わっています。
私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、小児科診療において、1個人の意見ではなく、常に科学的根拠(エビデンス)に基づいた診断と治療を最優先にしています。
インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、根拠の不確かな情報も少なくありません。「臍肉芽(赤ちゃんのおへそのトラブル)」に関するこの記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文レビューや国内外の診療ガイドラインを基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、日本一詳しく、そして正確に解説することを目指します。
1. 赤ちゃんのおへそが乾かない「臍肉芽(さいにくげ)」とは?
へその緒が取れた後、本来であればおへその底は乾燥して皮膚になります。しかし、炎症が続き、組織の増殖が過剰に起こると、赤く盛り上がった「肉芽(にくげ)」が残ってしまうことがあります。これを**臍肉芽(Umbilical Granuloma)**と言います。
- おへそから黄色や透明の汁(浸出液)が出続ける
- おへその中に赤い豆粒のような塊が見える
- 下着やオムツにおへその分泌物がつく
- 触ると少し血がつくことがある
基本的には良性の疾患であり、適切な治療を行えばきれいに治ります。しかし、放置すると細菌感染を起こすリスクがあるため、早めの受診が推奨されます。
2. 【最新エビデンス】なぜ「食塩処置」がベストなのか
昔からある治療法として「硝酸銀でおへそを焼く」方法や「糸で縛る」方法が知られていますが、現在の小児科医療のグローバルスタンダードでは、**「食塩(Table Salt)による処置」が最も推奨される第一選択(First-line treatment)**となっています。
「えっ、おへそに塩?」と驚かれるかもしれませんが、これは医学的根拠(エビデンス)に基づいた非常に有効な治療法です。
食塩処置の有効性を示すデータ
2021年に発表された最新のシステマティックレビュー(複数の研究を統合して分析した信頼性の高い論文)などによると、食塩を使用した治療には以下のメリットが示されています。
| 評価項目 | 食塩処置 (Salt) | 硝酸銀 (Silver Nitrate) |
|---|---|---|
| 治癒率 | 90〜100% 硝酸銀と同等、またはそれ以上の効果 |
85〜95% 非常に高いが、100%ではない |
| リスク・副作用 | なし 痛みもなく、安全性が極めて高い |
化学熱傷(やけど) 周囲の皮膚に付着すると黒変し、やけどを起こす |
| 治療期間 | 数日〜1週間程度 (1日1〜2回の処置が必要) |
即効性がある (ただし通院処置が必要) |
このように、食塩処置は「硝酸銀と同等の高い効果がありながら、やけどのリスクがゼロである」という点において、現在のベストな治療法と考えられています。
3. 硝酸銀(おへそを焼く処置)が第一選択ではなくなった理由
かつては、小児科の外来で「ちょっとおへそを焼きましょうね」と言って、硝酸銀スティックで肉芽を処置することが一般的でした。もちろん、この方法は現在でも有効であり、決して間違いではありません。
しかし、当院がこれを「第一選択」としない理由は、明確な「化学熱傷(Chemical burns)のリスク」があるからです。
硝酸銀は強い腐食作用を持っています。赤ちゃんが動いてしまい、正常な周囲の皮膚に薬剤が付着すると、皮膚が黒く変色し、やけど(潰瘍)を引き起こす事例が報告されています。
「治すための治療で、別の傷(やけど)を作ってはいけない」という観点から、まずは安全確実な食塩処置を行い、それでも治らない場合の「第二選択(Second-line)」として硝酸銀やステロイド外用薬を検討するのが、現代の標準的な考え方です。
4. 当院の治療方針と実際のケアについて
杉並区荻窪の長田こどもクリニックでは、臍肉芽の患者様に対して、最新のエビデンスに基づき以下のステップで治療を行っています。
Step 1:食塩処置の指導(First-line)
基本的には、ご家庭で実施できる食塩処置の方法を医師が指導します。
- おへそを清潔にした後、少量の食塩を肉芽に盛ります。
- 固定方法や、洗浄までの時間を当院で指導します。
- これを1日1〜2回、数日間継続していただきます。
※自己判断で行わず、必ず医師の診断を受けてから実施してください。おへその形状によっては別の病気(尿膜管遺残など)の可能性があるためです。
Step 2:ステロイド軟膏または硝酸銀(Second-line)
食塩処置で改善が見られない場合や、ご家庭での処置が難しい場合には、ステロイド軟膏(リンデロンVなど)の使用や、慎重な保護のもとでの硝酸銀処置を検討します。
5. よくある質問(Q&A)
6. まとめ
赤ちゃんのおへそのトラブル「臍肉芽」について、最新のエビデンスに基づいた解説を行いました。
- 臍肉芽の治療の第一選択は、安全で効果が高い「食塩処置」です。
- かつて主流だった「硝酸銀」は、やけどのリスクがあるため、現在は第二選択となっています。
- ステロイドも有効ですが、治癒までに少し時間がかかることがあります。
当院では、古い慣習にとらわれず、常にデータに基づいた「赤ちゃんにとって最も負担が少なく、効果的な治療」を選択しています。おへそのじゅくじゅくが気になる場合は、どうぞ安心してお早めにご相談ください。当院はNICU経験が長い小児科専門医による新生児外来も行っております。
産院を退院後、育児でのお悩み体重増加が不安なかた、体重増加やおヘソ、便秘など新生児のどんな悩みも当院にご相談ください。
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医療法人社団 長田こどもクリニック
〒167-0051 東京都杉並区南荻窪1-31-14
小児科専門医 副院長長田洋資 監修
- Srinivas Jois , et al. Management of umbilical granuloma in infants: A systematic review of randomised controlled trials. Aust J Gen Pract. 2021 Aug;50(8):589-594.
- Ogawa C, et al. Treatment with silver nitrate versus topical steroid treatment for umbilical granuloma: A non-inferiority randomized control trial. PLoS One. 2018 Feb 13;13(2):e0192688.
- Banerjee A, et al. Treatment of Umbilical Granuloma in Infants With Topical Application of Common Salt: A Scoping Review. J Pediatr Surg. 2023;58(9):1843-1848.

