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舌小帯短縮症とは?症状チェックと手術が必要な基準【世界標準の治療】

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舌小帯短縮症とは?症状チェックと手術が必要な基準【世界標準の治療】

「赤ちゃんの舌の形がハート型に見える」「授乳が痛くて辛いけれど、病院では『様子を見ましょう』と言われた」
このような悩みをお持ちのお母さんは、実は少なくありません。

インターネットで検索すると「手術ですぐ良くなった」という声もあれば、「手術は不要」という意見もあり、何が正解なのか分からず不安になりますよね。

当院、長田こどもクリニックでは、こうした混乱を解くために、個人の経験則ではなく、最新の世界的な医学的エビデンス(科学的根拠)に基づいた情報をお伝えします。

当院のブログが目指すこと:エビデンスに基づく情報発信

私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、小児科診療において、一個人の意見ではなく、常に科学的根拠(エビデンス)に基づいた診断と治療を最優先にしています。

インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、根拠の不確かな情報も少なくありません。「舌小帯短縮症」に関するこの記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文レビューや国内外の診療ガイドラインを基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、日本一詳しく、そして正確に解説することを目指します。

1. 舌小帯短縮症とは?わかりやすく解説

舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)とは、舌の裏側にある「ヒダ(膜)」が生まれつき短かったり、舌の先端近くにくっついていたりする状態のことです。

このヒダが舌の動きを制限してしまうため、舌を上に持ち上げたり、前に出したりすることが難しくなります。英語では「Tongue-tie(タング・タイ)」と呼ばれ、直訳すると「舌が縛られている」という意味になります。まさに舌がヒダによって床に縛り付けられているような状態です。

特徴的な見た目「ハート舌」

典型的な例では、赤ちゃんが泣いて口を大きく開けたときや、舌を前に出そうとしたときに、舌先が引っ張られて中央がくびれ、ハートの形 に見えることがあります。これを「ハート舌」と呼びます。
ただし、ハート型にならなくても、舌の奥の方で動きが制限されている「粘膜下口蓋裂」のような隠れたタイプ(Posterior Tongue-tie)もあるため、見た目だけで判断するのは注意が必要です。

2. うちの子は当てはまる?症状セルフチェック

「もしかして?」と思ったら、以下の症状が当てはまるか確認してみてください。舌小帯短縮症の影響は、赤ちゃんだけでなく、授乳しているお母さんにも現れるのが大きな特徴です。

赤ちゃんの症状

  • 舌を唇の外まで突き出せない
  • 泣くときに舌先がハート型になる
  • おっぱいを吸う力が弱く、すぐ外れる
  • 授乳中に「カッカッ」「チュパチュパ」と音を立てる(空気を飲み込んでいる音)
  • 授乳時間が異常に長い、または短すぎる
  • 体重の増えが悪い

お母さんの症状

  • 授乳時に乳首に激痛が走る
  • 乳首の先が切れる、血が出る
  • 乳首が変形している(リップスティック型)
  • 乳腺炎を繰り返している
  • おっぱいを飲ませているのに、胸の張りが取れない(飲み残し感)

これらに複数当てはまる場合、単なる「飲み方が下手」なのではなく、舌小帯短縮症による機能障害の可能性があります。

3. なぜ日本では「様子見」と言われるのか?

ここまで読んで「症状が当てはまる!」と思った方も、健診や他の病院で相談すると「様子を見ましょう」「大きくなれば伸びます」と言われてしまうことがあります。これには歴史的な背景があります。

日本における過去の経緯

以前日本では出生後当たり前のように舌小帯を切っている時代もありましたが、2001年、日本小児科学会は「舌小帯短縮症の手術は、哺乳障害や構音障害(発音の問題)に対する有効性が確立していない」という趣旨の見解を示しました。これにより、日本では長らく「手術は行わない」という流れが一般的になりました。

この影響で、今でも多くの医師が「切っても変わらない」と説明することがあります。しかし、これは「形」だけを見て判断していた時代の古い考え方になりつつあります。

4. 海外のスタンダードは「機能重視」の積極的治療

一方で、欧米(特にアメリカ、カナダ、イギリスなど)では、考え方が全く異なります。海外のガイドラインでは、舌の形そのものではなく、「授乳や発音などの『機能』に問題があるかどうか」を最重視します。

当院では、以下の国際的な主要機関のガイドラインやコンセンサスに準拠した診療を行っています。

機関・学会 主な見解・スタンス
米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
(AAO-HNS 2020)
舌小帯短縮症は母乳育児に悪影響を与える可能性がある。保存的治療が無効な場合、舌小帯切開術(Frenotomy)は有効で安全な選択肢であるとのコンセンサスを発表。[1]
米国小児科学会
(AAP)
舌小帯短縮症が、母親の乳頭痛や乳児の体重増加不良の原因となる場合、診断と治療(切開)の対象となると記載している。[2]
国際母乳医学会
(ABM)
母乳育児のトラブルがある場合、標準的な評価ツールを用いて診断し、必要であれば切開を推奨している。[3]

つまり、世界標準の医療現場では、「お母さんが授乳で痛みを感じている」「赤ちゃんがうまくおっぱいを飲めない」という事実があれば、積極的に治療(手術)を行うのが当たり前になっています。

5. 当院が採用する世界標準の手術適応基準

当院では、やみくもに手術を勧めることはありません。しかし、必要な場合には適切な時期に介入することが、赤ちゃんの成長とお母さんの心身の健康に不可欠だと考えています。

具体的には、先ほどのチェックリストに加え、医師による詳細な診察(Hazelbakerスコア等の国際指標を参考)を行い、「授乳機能に障害がある」と判断した場合に手術を提案します。

6. Q&A:よくあるご質問

Q1. 手術は痛くないのでしょうか?全身麻酔ですか?

A. 新生児や低月齢の赤ちゃんの場合、舌小帯には血管や神経が少ないため、ほとんどの場合、局所麻酔(表面麻酔など)のみで短時間で終了します。全身麻酔は通常必要ありません。処置直後から授乳が可能になり、お母さんの痛みがその場で消失することも珍しくありません。

Q2. 手術をしても、またくっついてしまう(癒着)ことはありますか?

A. 切開した部分が治る過程で再癒着する可能性はゼロではありません。これを防ぐために、当院では術後のアフターケア(ストレッチやマッサージなど)の指導を徹底しています。海外のプロトコルに従い、再癒着を防ぐための具体的な方法をお伝えします。

Q3. 将来の発音(滑舌)のために、今のうちに切ったほうがいいですか?

A. 発音に関しては、授乳障害ほど明確なエビデンスが確立されていません(AAO-HNSでも議論が分かれています)。しかし、明らかに舌の動きが悪く、将来的にラ行やタ行の発音に支障が出ると予測される重度のケースでは、早期の対応が望ましい場合もあります。当院ではお子様の舌の動きを個別に評価してアドバイスいたします。

7. まとめ:ひとりで悩まずにご相談ください

日本ではまだ「様子見」が主流かもしれませんが、世界に目を向ければ、舌小帯短縮症は「治療することで、母乳育児の苦痛を取り除ける疾患」として認知されています。

長田こどもクリニックは、古い慣習にとらわれず、「今、目の前で困っているお母さんと赤ちゃん」のために、世界標準のエビデンスに基づいた最適な医療を提供します。

授乳の痛みや赤ちゃんの体重増加でお悩みの方は、ひとりで抱え込まず、ぜひ一度当院へご相談ください。

ご予約・お問い合わせ

当院はWeb予約に対応しております。初診の方もスムーズにご予約いただけます。
舌小帯のご相談の場合は、初診問診の備考欄にその旨をご記入いただくとよりスムーズです。

長田こどもクリニック
〒167-0051 東京都杉並区荻窪1-31-14
副院長:長田洋資(小児科専門医)
参考文献・エビデンス
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