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【小児科医が解説】RSウイルスは何日で治る?症状・登園目安・治療法まで|杉並区・荻窪

 

 

【小児科医が解説】RSウイルスは何日で治る?症状・登園目安・治療法まで|杉並区・荻窪

当院のブログが目指すこと

インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、医学的根拠が不明瞭であったりして、「どれが本当に信頼できる情報なのか分かりにくい」と感じたことはありませんか?私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、そうした保護者の皆さまの不安に応えるため、明確なエビデンス(科学的根拠)に基づいたブログ作成を心がけています。この記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文の情報を基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、「RSウイルス感染症」について徹底解説します。

こんにちは。荻窪にある長田こどもクリニックの副院長です。

秋から冬にかけて、お子さんの咳や鼻水が長引くと「ただの風邪かな?」「もしかして…」と心配になりますよね。特に「RSウイルス感染症」は、多くのお子さんが経験する病気ですが、初めてのお子さんや、まだ小さい赤ちゃんの場合は、症状の経過や重症化のリスクがあり不安に感じることでしょう。一定数悪化する方がいますが、基本はみんながかかる風邪のひとつなのです。

この記事では、そんなRSウイルス感染症に関するあらゆる疑問に、科学的根拠に基づいて一つひとつ丁寧にお答えしていきます。

RSウイルス感染症とは?知っておきたい基本

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、急性呼吸器感染症を引き起こす、ごくありふれたウイルスです。特に乳幼児期のお子さんにとっては、避けては通れない感染症の一つと言えます。

2歳までにほぼ全員が感染するウイルス

RSウイルスは非常に感染力が強く、ほとんどすべての子どもが2歳になるまでに一度は感染するとされています[1]。一度かかっても免疫は長続きせず、生涯にわたって何度も感染を繰り返しますが、2回目以降は軽い風邪症状で済むことがほとんどです。

感染経路と潜伏期間

主な感染経路は、咳やくしゃみのしぶきを吸い込む「飛沫感染」と、ウイルスが付いた手で目・鼻・口を触る「接触感染」です[2]。感染してから症状が出るまでの潜伏期間は、およそ4〜6日(範囲は2〜8日)です[3]。ウイルスは症状が改善した後も数週間排出されることがあるため[4]、家庭内や集団生活での感染対策が重要になります。

症状の経過【何日で治る?】ピークと回復までの道のり

RSウイルス感染症の症状は、年齢や初感染かどうかで大きく異なります。

年齢で変わる症状

  • 乳幼児(特に1歳未満):初めての感染が多く、重症化しやすいのが特徴です。鼻水・咳・発熱といった風邪症状から始まり、次第に咳がひどくなります。「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった呼吸音が聞こえる「細気管支炎」や「肺炎」を起こしやすいです。
  • 2歳以上の幼児・学童:多くが再感染のため、鼻風邪や気管支炎など、比較的軽い症状で済みます。

一般的な症状の経過

典型的な経過は以下の通りです。この流れを知っておくと、落ち着いて対応しやすくなります。

  1. 初期(1〜3日目):鼻水、咳、発熱など、普通の風邪と見分けがつきません。
  2. ピーク(4〜6日目):咳がひどくなり、痰が絡んだ湿った咳に変わります。呼吸が速くなったり、ゼーゼーしたりと、呼吸器症状が最もつらくなる時期です。
  3. 回復期(7日目以降):ピークを越えると、症状はゆっくりと改善に向かいます。一般的に、症状は1週間から10日ほどで回復しますが、咳だけは2〜3週間長引くこともあります。

【要注意】無呼吸発作

特に生後2か月未満の乳児や早産児では、呼吸を15〜20秒以上止めてしまう「無呼吸発作」が最初の症状として現れることがあります[5]。これは非常に危険なサインですので、すぐに医療機関を受診してください。

特に注意が必要なお子さん(重症化リスク)

ほとんどは軽症で回復しますが、以下のお子さんは細気管支炎や肺炎を起こしやすく、入院が必要になるなど重症化するリスクが高いことが知られています[6]

  • 生後6か月未満の赤ちゃん
  • 早産で生まれたお子さん(特に在胎35週未満)
  • 慢性肺疾患(気管支肺異形成症など)を持つお子さん
  • 先天性心疾患を持つお子さん
  • ダウン症候群のお子さん
  • 免疫不全の状態にあるお子さん

RSウイルス感染症の治療法:お薬は必要?

基本は「対症療法」

残念ながら、RSウイルスに直接効く特効薬はありません。そのため、治療はお子さんの症状を和らげ、体がウイルスと戦うのをサポートする「対症療法」が中心となります[7]

咳止めや去痰薬、気管支拡張薬などの効果は限定的とされており、当院でも症状や月齢に応じて慎重に処方を検討します。大切なのは、お薬に頼ることよりも、後述するホームケアをしっかり行うことです。

入院が必要な場合

呼吸が苦しい、水分がとれない、ぐったりしている、などの場合は、入院して酸素投与や点滴が必要になることがあります。

ホームケアと受診のタイミング

ご家庭でできること
  • こまめな水分補給:少しずつ頻回に与えるのがコツです。
  • 鼻水の吸引:鼻が詰まると呼吸も哺乳も苦しくなります。市販の鼻吸い器でこまめに吸ってあげましょう。
  • 加湿:空気が乾燥すると咳が悪化します。湿度50〜60%を目安に保ちましょう。
  • 安静:十分な睡眠と休息が回復を助けます。
こんな症状はすぐに受診を!
  • 呼吸が速い、苦しそう(肩で息をする、胸やお腹がペコペコへこむ)
  • 顔色や唇の色が悪い(青白い)
  • 母乳やミルクの飲みが普段の半分以下
  • ぐったりして元気がない、遊ばない
  • 呼吸が一時的に止まる(無呼吸)

RSウイルス Q&Aコーナー

Q1. 熱はどのくらい続きますか?

A1. 3〜5日程度続くことが一般的ですが、個人差が大きいです。ピークを過ぎても高熱が続く、あるいは一度下がった熱が再び上がってくる場合は、中耳炎や細菌性肺炎の合併も考えられるため、再度受診してください。

Q2. 登園・登校はいつからできますか?

A2. インフルエンザのような明確な出席停止期間はありません。厚生労働省のガイドラインでは「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」が目安です。具体的には、ひどい咳やゼーゼーがなくなり、普段通りに食事や水分がとれ、元気に遊べるようになれば登園可能と考えてよいでしょう。

Q3. 大人にもうつりますか?

A3. はい、うつります。多くは軽い鼻風邪で済みますが、高齢者や心肺に基礎疾患のある方は肺炎を起こし重症化することがあるため注意が必要です[8]。お子さんの看病の後は、こまめな手洗いを徹底しましょう。

Q4. 診断のための検査は必要ですか?

A4. RSウイルスと診断されても治療方針は対症療法であることに変わりはないため、必ずしも検査が必要ではありません[9]。ただし、1歳未満の乳児や重症化リスクのあるお子さんで、診断を確定することが重要と判断される場合には検査を行うことがあります。ただの風邪症状であれば特に検査は行わないことが多いです。お子様にとって負担が増えて治療方針はかわりません。

長田こどもクリニックの考え方:不安な時期を一緒に乗り越えるために

私たちは、お子さんの病気と向き合う保護者の皆さまの不安な気持ちに、何よりも寄り添いたいと考えています。RSウイルス感染症は、特に症状のピーク時には「このまま悪化したらどうしよう」と心配になることでしょう。

大切なのは、病気の全体像を正しく理解し、危険なサインを見逃さないことです。当院では、お子さんの症状を丁寧に診察することはもちろん、ご家庭での具体的なケアの方法や、どんな時に受診すればよいかを分かりやすくお伝えし、皆さまが安心して看病に専念できるようサポートします。

お忙しい保護者の皆さまへ:当院の診療体制

お仕事やご兄弟の送迎などで、日中の受診が難しい保護者の皆さまにも安心してご利用いただけるよう、当院は柔軟な診療体制を整えています。

  • 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
  • 土曜日も、13時まで診療
  • クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備

杉並区荻窪で、お子さまのつらい症状と、保護者の皆さまの不安に、いつでも寄り添います。少しでも心配なことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

参考文献

  1. 1)American Academy of Pediatrics. Respiratory syncytial virus. In: Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases, 33rd ed, Kimberlin DW, et al (Eds), American Academy of Pediatrics, Itasca, IL 2024. p.713.
  2. 2)Hall CB, Douglas RG Jr, Schnabel KC, Geiman JM. Infectivity of respiratory syncytial virus by various routes of inoculation. Infect Immun 1981; 33:779.
  3. 3)American Academy of Pediatrics. (2024). *Red Book: 2024-2027 Report of the Committee on Infectious Diseases.* (p. 713).
  4. 4)Hall CB, Geiman JM, Biggar R, et al. Respiratory syncytial virus infections within families. N Engl J Med 1976; 294:414.
  5. 5)Ralston S, Hill V. Incidence of apnea in infants hospitalized with respiratory syncytial virus bronchiolitis: a systematic review. J Pediatr 2009; 155:728.
  6. 6)Boyce TG, Mellen BG, Mitchel EF Jr, et al. Rates of hospitalization for respiratory syncytial virus infection among children in medicaid. J Pediatr 2000; 137:865.
  7. 7)Jorquera PA, Tripp RA. Respiratory syncytial virus: prospects for new and emerging therapeutics. Expert Rev Respir Med 2017; 11:609.
  8. 8)Walsh EE, Falsey AR, Hennessey PA. Respiratory syncytial and other virus infections in persons with chronic cardiopulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med 1999; 160:791.
  9. 9)Welliver RC, Hall CB. Respiratory syncytial virus. In: Feigin and Cherry’s Textbook of Pediatric Infectious Diseases, 8th ed, Cherry JD, et al (Eds), Elsevier, Philadelphia 2018. p.1780.

長田こどもクリニック
杉並区荻窪の小児科・アレルギー科

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