【杉並区の小児科医が解説】子供の副鼻腔炎、その黄色い鼻水は抗生物質が必要?長引く咳との関係
はじめに:その鼻水、本当に抗生物質が必要ですか?
お子さんの鼻水の色が黄色や緑色に変わると、「細菌に感染したのでは?」「早く抗生物質を飲ませないと副鼻腔炎が悪化するのでは?」とご心配になりますよね。特に、保育園や幼稚園に通い始めると、お子さんは頻繁に鼻水を垂らすようになり、そのたびに不安を感じる保護者の方も少なくないでしょう。
しかし、私たち小児科専門医は、鼻水の色だけを理由に抗生物質を処方することはほとんどありません。 なぜなら、そこには医学的な根拠(エビデンス)と、お子さんの体を守るための大切な理由があるからです。
この記事では、杉並区荻窪にある長田こどもクリニックが、お子さんの鼻水の色と感染症の本当の関係、そして本当に治療が必要な「急性細菌性副鼻腔炎」を見分けるためのポイントを、保護者の皆様に分かりやすく解説します。
子供の黄色い鼻水|それ、ウイルスと戦っているサインです
まず最も知っていただきたいのは、鼻水の色は病原体の種類(ウイルスか細菌か)を直接示しているわけではない、ということです。
黄色・緑色の正体は免疫細胞「好中球」
子どもたちの風邪の9割はウイルス感染によって引き起こされます。ウイルスが体内に侵入すると、免疫システムが作動し、白血球の一種である「好中球(こうちゅうきゅう)」という頼もしい兵隊が戦うために集結します。
この好中球は、ウイルスと戦い役目を終えると、その一部が鼻水に混じって排出されます。好中球には「ミエロペロキシダーゼ」という緑色の酵素が含まれているため、その量が増えることで鼻水が黄色や緑色に見えるのです。
つまり、色のついた鼻水は、お子さんの体が一生懸命ウイルスと戦っている証拠であり、風邪が治っていく過程で見られるごく自然な反応です。
抗生物質の乱用が招く「薬剤耐性菌」のリスク
「念のため」の抗生物質投与がなぜ推奨されないのか。それは、不必要な抗生物質の使用が、いざという時に薬が効かなくなる「薬剤耐性菌」を生み出す大きな原因となるからです。また、抗生物質は悪い菌だけでなく、お腹の調子を整える良い菌(善玉菌)まで殺してしまうため、下痢などの副作用を引き起こすことも少なくありません。
だからこそ、私たちは国際的なガイドラインに基づき、本当に抗生物質が必要なケースを慎重に見極めることを非常に重視しています。
⚠️ 子供の副鼻腔炎?
受診を考えるべき3つの危険なサイン
大切なのは、鼻水の色という「点」で判断するのではなく、症状全体の「期間」や「経過」という「線」で捉えることです。以下はアメリカ小児科学会が発表している急性細菌性副鼻腔炎を疑う所見3項目となります。
✅ サイン①:症状が「長く続く」
色のついた鼻水や、痰の絡んだ湿った咳が10日以上、改善する気配なく続いている。
✅ サイン②:症状が一度よくなってから「ぶり返す」
数日間、熱や鼻水が少し良くなっていたのに、再び38度以上の発熱があったり、鼻水や咳が明らかに悪化したりする。("double worsening"と呼ばれます)
✅ サイン③:「高熱」から始まる重い症状
39℃以上の高熱とともに、膿のようなドロッとした色のついた鼻水が3日以上続いている。
指標カテゴリ |
臨床指標 | 重み付け/スコア | 備考/定義 |
主要基準 | 症状の遷延 (10日以上) | 3 |
鼻汁(性状は問わない)や咳が10日以上改善しない状態。
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症状の増悪 (Worsening) | 3 |
いったん改善傾向にあったウイルス性上気道炎の症状が再度悪化する。
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重症な発症 (Severe Onset) | 3 |
39℃以上の高熱と膿性鼻汁が3日間以上持続する。
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副次基準 | 顔面痛・圧痛 | 2 |
副鼻腔領域に一致した痛みや圧痛を認める。
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膿性鼻汁 (単独所見として) | 1 |
他の主要基準を満たさないが、色のついた鼻汁が持続する。
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発熱 (38℃台) | 1 |
重症基準を満たさないが、微熱〜中等度の発熱がある。
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頭痛 | 1 |
特に前頭部や頬部に限局した頭痛。
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支持的所見 | 治療への反応 | 1 |
適切な抗菌薬治療に明確に反応し、症状が改善する。
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既往歴 | 0.5 |
アレルギー性鼻炎や喘息などの素因がある。
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小児科だからこそできる、専門的な「鼻と耳の診察」
杉並区荻窪にある当院では、お子さんの症状を的確に診断するために、小児科専門医としての総合的な視点と、専門的な診察機器を組み合わせた診療にこだわっています。
カメラで「鼻の奥」と「鼓膜」をしっかり観察します
お子さんの鼻の中がどうなっているか、外から見ただけでは正確には分かりません。当院では、必要に応じて細いカメラで鼻の粘膜の腫れや鼻水の性状を直接観察したり、ビデオ耳鏡を使って保護者の方と一緒にモニターで鼓膜の状態を確認したりします。
これにより、副鼻腔炎の程度を評価するだけでなく、鼻水が原因で起こりやすい急性中耳炎(特に乳幼児は繰り返しやすい)を見逃さずに診断することが可能です。
「One Airway, One Disease」- 鼻・耳・胸は一つのチームです
お子さんで長引く咳の原因が、実は副鼻腔炎などの「鼻」にあることは決して珍しくありません。鼻・のど・気管支・肺は、別々の臓器ではなく「One Airway(一つの気道)」として繋がっています。そのため、鼻(上気道)の炎症が、気管や気管支(下気道)に影響を及ぼし、咳や痰の原因となることが非常に多いのです。これを「One Airway, One Disease」という概念で捉えます。
この考え方に基づき、私たちは鼻の症状で受診されたお子さんでも、必ず耳の状態を確認し、胸の音を丁寧に聴診します。「鼻水だけ」「咳だけ」という部分的な診察ではなく、お子さんの体を「鼻・耳・胸」の繋がった一つのシステムとして総合的に評価すること。それが、正確な診断と適切な治療への最短距離だと考えています。
まとめ:杉並区で長引く鼻水・咳は、一人で悩まずご相談を
お子さんの鼻水や咳が長引いてご心配な時、あるいは「これはただの風邪?それとも副鼻腔炎?」と判断に迷う時は、どうぞお一人で悩まず、杉並区荻窪の長田こどもクリニックにご相談ください。丁寧な診察と分かりやすい説明で、保護者の方の不安にしっかりと寄り添います。
私たちは、お子さん一人ひとりの症状と丁寧に向き合い、「本当に必要な医療だけを、適切なタイミングで」提供することをお約束します。
当院は平日夜8時まで、そして土曜日も診療していますので、お仕事帰りや保育園・幼稚園の後でも立ち寄りやすくなっています。駐車場も6台用意していますので練馬区からも受診しただけます。専門家として、そして同じ子を持つ親として、皆さんの不安に寄り添い、最適な治療をご提案します。どうぞ、お気軽にご来院ください。
予約はこちらから
https://c.inet489.jp/osd2030/yoyaku/login.cgi?recno=&birth=
長田こどもクリニック
杉並区南荻窪1-31-14
営業時間:平日毎日よる8時まで、土曜日は13時まで
電話番号:03-3334-2030
https://www.osadaclinic.com/