【医師解説】小児皮膚科とは?皮膚科と小児科どっちに行く?小児アトピー治療の正解|杉並区・荻窪・長田こどもクリニック
私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、小児科診療において、1個人の意見ではなく、常に科学的根拠(エビデンス)に基づいた診断と治療を最優先にしています。
インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、根拠の不確かな情報も少なくありません。この記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文レビューや国内外の診療ガイドラインを基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、「子どもの皮膚トラブル」について徹底解説します。
「赤ちゃんの湿疹が治らない」「子どものニキビ、どこで見てもらえばいいの?」
大切なお子さまの肌トラブル。いざ病院に行こうと思ったとき、「皮膚科」に行くべきか、「小児科」に行くべきか、迷われたことはありませんか?
「皮膚科で診てもらうべき」「いや、小児科だ」と様々な意見がありますが、私たちアレルギーを熟知した小児科医が考える「小児皮膚科」の定義は明確です。
この記事では、アトピー性皮膚炎やニキビ治療に力を入れている小児科専門医が、「小児皮膚科」の本当の定義と、なぜ当院のような小児科での皮膚管理がアトピー治療の成功につながるのかを、医学的なエビデンスに基づいて解説します。
目次
1. そもそも「小児皮膚科」という専門医はいない?
実は、日本の医療制度において「小児皮膚科専門医」という公的な資格は存在しません。「小児皮膚科」という看板は、皮膚科医が掲げることもあれば、小児科医が掲げることもあります。
では、誰が診るのが正解なのでしょうか?
私たちが考える答えは、診療科の垣根を超えて、以下の2つのどちらかの条件を満たす医師こそが、お子さまの肌トラブルを任せるに値する医師です。特にアレルギーに関わるアトピー、湿疹はどちらかにみてもらえば正解です。
- 皮膚科診療に長けたアレルギーを熟知した小児科医
- 小児アレルギーを熟知した皮膚科医
※アメリカやイギリスなどの海外では、”小児皮膚科”は確立された専門分野です。そこでは、小児科と皮膚科の両方のトレーニングを受けた医師、あるいは高度な研修を受けた皮膚科医が、血管腫や遺伝性皮膚疾患、重度のアトピー性皮膚炎などを診療しています。
2. 「皮膚科」と「小児科」の得意分野と使い分け
それぞれの専門性を理解することで、賢く使い分けることができます。
「皮膚という臓器」のスペシャリストです。
- 日常的な皮膚トラブルの管理: アトピー性皮膚炎、乳児湿疹、あせも、ニキビ、とびひなど。
- 外科的処置: アザのレーザー治療、ホクロや粉瘤の手術など。
- 希少疾患の診断: 見た目が珍しい発疹、皮膚の腫瘍、自己免疫性水疱症などの診断。
- 専門的な検査: 皮膚生検(皮膚の一部を採って調べる検査)など。
「子どもという存在」と「アレルギー」のスペシャリストです。
- 日常的な皮膚トラブルの管理: アトピー性皮膚炎、乳児湿疹、あせも、ニキビ、とびひなど。
- 生活指導とステロイド調整: 子どもの皮膚に合わせた薬の調整や、保育園・学校生活・ご両親を考慮したケアの指導。
- 全身管理: 食物アレルギーや喘息・アレルギー性鼻炎の合併、成長・発達への影響までトータルで診る力。
3. 私たちが考える「真の小児皮膚科医」とは
当院は小児科ですが、皮膚診療において「アトピー性皮膚炎や一般的な皮膚疾患は皮膚科に劣らない」、「アレルギー疾患においてはより包括的な」診療を提供できると考えています。
なぜなら、子どもの皮膚トラブルの多く(特に湿疹やアトピー)は、単なる皮膚の表面の問題ではなく、免疫システム(アレルギー)や身体の成長と密接に関わっているからです。
私たちは、皮膚科診療の基本(診断、外用薬の選択)を学び実践した上で、小児科医としての「全身を診る目」を加えて診療にあたっています。これが、私たちが目指す「小児皮膚科」の形です。
もちろん皮膚科医に対する強いリスペクトを持っており、稀な疾患・診断出来ない・治療出来ないものは私たちも適切なタイミングで皮膚科に紹介することがあります。今でも大学病院の皮膚科専門医とコンタクトをとり最新の治療や皮膚科からの視点など情報交換を続けています。
4. なぜ当院だとアトピーが改善するのか?「患者指導」の力
「今小児科・皮膚科に通っているけれど良くならない」「薬をもらうだけで、塗り方を教えてもらえない」…そんなお悩みを抱えて来院される方が多くいらっしゃいます。
アトピー性皮膚炎の治療において、薬と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「患者指導(教育)」です。どんなに良い薬も、塗る量や回数、塗り方が間違っていれば効果は半減してしまいます。
科学が証明する「教育」の効果
ドイツで行われた大規模な研究(AGNESスタディ)では、小児アトピー性皮膚炎の患児と保護者に対して、医学的・心理的な教育プログラム(塗り方や悪化因子の対策など)を実施したところ、皮膚の症状だけでなく、かゆみや生活の質(QOL)が長期的に改善したことが報告されています[1]。日本でも同様に、教育入院や外来での指導が重症度を下げることが示されています。
当院では、ただ薬を処方するだけでなく、以下の指導を徹底しています。
- 初診は15〜20分確保: 通常の診療の数倍の時間をとり、病態や治療のゴールを丁寧に説明します。
- 実技指導: 「適量(FTU)」とはどれくらいか、実際に塗ってみせて指導します。
- プロアクティブ療法の導入: 「悪くなったら塗る」のではなく、「良くなっても予防的に塗る」ことで再発を防ぐ、世界標準の治療法を実践します。
この徹底した「対話と指導」こそが、当院で多くのお子さまのアトピーが改善している理由です。
アトピー性皮膚炎について詳しく知りたい方へ
当院のアトピー治療(プロアクティブ療法)、最新の新薬(デュピクセント・ミチーガ)、ステロイドへの不安解消など、詳しく解説しています。
→ 小児アトピー専門外来の詳細はこちら5. 小児科医だからできる「アレルギーマーチ」の阻止
子どものアトピー性皮膚炎は、放置するとその後の人生に大きな影響を与えかねません。
乳児期のアトピー性皮膚炎は、その後の食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎へと続く「アレルギーマーチ」の入り口となることが分かっています[2]。
私たち小児科医は、皮膚をきれいにすることはもちろん、「将来のアレルギー疾患を予防する」という長期的な視点を持って治療にあたります。皮膚のバリア機能を守ることは、お子さまの未来の健康を守ること。その使命感を持って、日々の診療にあたっています。ですので皮膚のフォローを行いながらを日々確認しています。
ニキビ治療について詳しく知りたい方へ
「ニキビも小児科で?」もちろんです。思春期の心と体に寄り添い、ニキビ跡を残さないための早期治療(ベピオ、デュアック、ディフェリンなど)を行っています。
→ 【完全版】ニキビ治療ガイドを読む6. 皮膚診療が食物アレルギー予防のカギとなる理由
なぜ、食物アレルギーのコントロールに皮膚科診療(スキンケア)が欠かせないのでしょうか。
これには強力な科学的根拠があります。
二重抗原曝露仮説(Dual Allergen Exposure Hypothesis)
2008年にGideon Lack博士らが提唱した概念で、現在のアレルギー予防のスタンダードとなっています[4]。
- 経皮感作:荒れた皮膚からアレルゲン(食べ物のかすなど)が入ると、体はそれを「敵」とみなし、アレルギー反応の準備(感作)をしてしまう。
- 経口免疫寛容:口から適切に食べることで、体はそれを「食べ物」と認識し、アレルギー反応を抑える(寛容)。
つまり、「湿疹がある状態で放置すること」自体が、食物アレルギーを発症させるリスクになるのです。
日本発のエビデンス:PETITスタディ
この仮説を裏付ける重要な研究が日本で行われました。成育医療研究センターを中心としたPETIT研究(2017年)です[5]。
アトピー性皮膚炎のある乳児に対し、「皮膚をきれいに治療してから」微量の卵を食べ始めたグループは、そうでないグループに比べて、卵アレルギーの発症率が約8割も減少しました。
この結果が示すのは、「適切な皮膚科診療(スキンケアと抗炎症治療)こそが、最高の食物アレルギー予防策である」という事実です。
私達は、小児アレルギーを診るうえで、小児皮膚診療はこれまで欠かすことができない診療であり、食物アレルギーのコントロールには皮膚のコントロールが不可欠であると考えています。
6. 杉並区・荻窪でお子さまの肌に悩んだら
「皮膚科に行くほどでもないかな?」「小児科で相談していいのかな?」
そんな迷いは不要です。皮膚のことも、全身のことも、まずは「かかりつけの小児科」である長田こどもクリニックにご相談ください。
私たちは、皮膚科専門医へのリスペクトを持ちつつ、小児科医としての強みを最大限に活かし、お子さまの肌と健康を守ります。
アトピー性皮膚炎の治療は、定期的な通院が欠かせません。当院は、お仕事などで日中の受診が難しい保護者の皆さまにも安心して通院を続けていただける体制を整えています。
- 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
- 土曜日も、13時まで診療
- クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備
杉並区荻窪で、お子さまの肌の悩みに、いつでも寄り添います。
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参考文献
- Staab D, et al. Age related, structured educational programmes for the management of atopic dermatitis in children and adolescents: multicentre, randomised controlled trial. BMJ. 2006;332(7547):933.
- Lack G. The dual-allergen exposure hypothesis. J Allergy Clin Immunol. 2008;121(6):1331-6.
- 日本皮膚科学会ガイドライン. アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2021.
- Lack G. Epidemiologic risks for food allergy. J Allergy Clin Immunol. 2008;121(6):1331-1336. [PubMed]
- Natsume O, et al. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017;389(10066):276-286. [PubMed]
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杉並区荻窪の小児科・アレルギー科

