子どものおねしょ(夜尿症)はいつから治療?
ガイドラインに基づく最新治療法とエビデンス
「小学校に入ったのに、まだ毎日のようにおねしょをしてしまう」「お泊まり保育や林間学校が近づいてきて不安…」
毎朝の布団の洗濯や、お子様の自尊心への影響など、夜尿症(おねしょ)に関するお悩みは、実は多くのご家庭が抱えています。しかし、「そのうち治るから」と様子を見すぎてしまったり、逆に焦って叱ってしまったりすることは、解決を遠ざけてしまうこともあります。
今回は、世界的な標準となっている英国NICEガイドラインや国際禁制学会(ICCS)の最新知見に基づき、夜尿症の正しい知識と、当院で行っている「科学的根拠に基づいた治療」について解説します。
私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、小児科診療において、1個人の意見ではなく、常に科学的根拠(エビデンス)に基づいた診断と治療を最優先にしています。
インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、根拠の不確かな情報も少なくありません。「小児の夜尿症」に関するこの記事も、世界中の医師が信頼を寄せる最新の医学論文レビューや国内外の診療ガイドラインを基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、日本一詳しく、そして正確に解説することを目指します。
1. そもそも「夜尿症」とは?どのくらいいるの?
医学的には、5歳以上のお子様で、睡眠中に無意識に排尿してしまう状態を「夜尿症」と定義します(一般的には「おねしょ」と呼ばれます)。
夜尿症は決して珍しいことではありません。統計によると、以下の割合で見られます。
- 5歳児:約15%(クラスに数人はいる計算です)
- 10歳児:約5%
- 15歳以上:約1〜2%
年齢とともに自然に治る(自然軽快する)確率は高いものの、すべてのお子様が自然に治るわけではありません。また、頻度が多い場合や、一度治ったのに再発した場合(二次性夜尿)は、背景に別の病気が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
2. 治療を始めるべきタイミング
「いつ病院に行けばいいですか?」という質問をよくいただきます。医学的な介入を検討するタイミングは、年齢だけでなく「本人とご家族が困っているかどうか」が最大の基準です。
- 6歳(小学校入学前後)を過ぎても、定期的におねしょがある場合
- お泊まり行事(林間学校や修学旅行)に参加したいが不安がある場合
- おねしょが原因で、お子様の自尊心が傷ついている(自信をなくしている)場合
- 一度6ヶ月以上おねしょがなかったのに、急に再開した場合
特に、便秘が隠れている場合や、昼間のお漏らしもある場合は、早めの受診をお勧めします。便秘は夜尿症の治療を妨げる大きな要因となるため、当院ではまず便秘の治療から開始することも少なくありません。
3. まずはここから!生活習慣の改善(初期治療)
お薬や機械を使う前に、まずは生活習慣の見直しを行います。これだけで改善するケースもあります。ご家庭で今日からできるポイントは以下の通りです。
水分摂取のコントロール(40-40-20の法則)
夜間の尿量を減らすために、専門家の間でも推奨されている「40-40-20の法則」を目安に1日の水分摂取の配分を見直します。単に水を制限するのではなく、「朝と昼にしっかり飲み、夜を控える」ことが重要です。
- 朝(7時〜正午):1日の水分の40%を摂取
- 昼(正午〜17時):1日の水分の40%を摂取
- 夕方以降(17時以降):残りの20%に抑える
夕食時の高カロリーな飲み物や、カフェイン(お茶やコーラなど)を含む飲み物は利尿作用があるため避けましょう。
おねしょは、お子様がわざとやっているわけでも、親御さんの育て方のせいでもありません。「どうしてまた!」と叱ることは、お子様のストレスを増やし、治療効果を下げることが研究で分かっています。「起こしてもあなたのせいじゃないよ」と安心させてあげてください。
4. 積極的治療:アラーム療法と薬物療法の科学的根拠
生活改善を3〜6ヶ月続けても改善が見られない場合、積極的な治療(アラーム療法または薬物療法)を開始します。
当院では、英国のNICEガイドライン [CG111](2010年発行、2023年9月最終更新)および国際禁制学会(ICCS)の推奨に基づき、科学的に効果が証明されている以下の2つの治療法を主軸に提案しています。
| 治療法 | アラーム療法(夜尿アラーム) | 薬物療法(デスモプレシン) |
|---|---|---|
| 仕組み | パンツにセンサーを付け、水分を感知するとアラームが鳴る。 | 抗利尿ホルモン(尿を濃縮するホルモン)を補充する。 |
| なぜ効くのか (エビデンス) |
【条件付け学習】 脳と膀胱の連携をトレーニングします。「排尿=起きる(または尿を止める)」という回路を脳に学習させます。 コクランレビューの研究(2020)でも、治療終了後の再発率が最も低いことが示されており、長期的な根治を目指す場合の第一選択となります。 |
【尿量減少作用】 夜尿症の子の一部は、夜間にこのホルモンが不足し、尿が作られすぎています(夜間多尿)。 薬でホルモンを補うことで、速やかに尿量を減らします。研究では即効性が高いことが証明されていますが、服用をやめると元に戻りやすい傾向があります。 |
| 推奨されるケース | ・週に2回以上おねしょがある ・ご家族の協力が得られる ・根本的に治したい(再発を防ぎたい) |
・おねしょの頻度が少ない(週2回以下) ・キャンプなどで「その日だけは濡らしたくない」 ・夜間の尿量が明らかに多いタイプ |
アラーム療法は家庭で行う治療ですが、専用の機器が必要です。当院では在庫を置いていませんが、アワジテック社の『ピスコール』のレンタルをご案内しています。
当院からの案内であれば、提携医療機関の限定プランとして比較的安価にレンタルすることが可能です。アラーム療法にご興味がある方も、ぜひ当院で一度ご相談下さい。
5. よくある質問(Q&A)
布団が濡れるのを防ぐ一時的な処置としては有効ですが、これ自体は「夜尿症の治療」にはなりません。むしろ、抗利尿ホルモンの分泌リズムを乱したり、膀胱におしっこを溜める力が育たなくなる可能性があります。
ただし、引っ越しや弟妹の誕生などの環境変化で一時的におねしょが増える(二次性夜尿)ことはあります。
6. まとめ:焦らず、でも放置せず相談を
夜尿症は、適切な評価と治療を行えば改善する症状です。「そのうち治る」と一人で悩まず、まずはお気軽に相談してください。
当院では、おねしょ日記(排尿日誌)を用いた詳細な評価を行い、便秘の有無や膀胱の状態を確認した上で、お一人おひとりに合ったエビデンスに基づく治療計画を立てます。お子様が自信を持って学校生活や行事を楽しめるよう、私たちが全力でサポートします。
診療案内・ご予約
長田こどもクリニックでは、一般診療の時間内でも夜尿症のご相談を承っておりますが、詳細な問診が必要なため、WEB予約の際に「夜尿症相談」と記載いただくか、お電話でお問い合わせいただけるとスムーズです。
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Bedwetting in under 19s: approach to assessment and management [CG111]. (Published: 28 October 2010. Last updated: 08 September 2023)
- Nevéus T, et al. Management and treatment of nocturnal enuresis-an updated standardization document from the International Children's Continence Society. J Pediatr Urol 2020; 16:10.
- Jalkut MW, et al. Enuresis. Pediatr Clin North Am 2001 Dec;48(6):1461-88.(水分摂取の配分について)
- Caldwell PH, et al. Alarm interventions for nocturnal enuresis in children. Cochrane Database Syst Rev 2020; 5:CD002911.
- UpToDate: Management of monosymptomatic nocturnal enuresis in children (Accessed 2026).

