「アラーム療法が続かない…」と諦める前に。
小児科医が教える成功のコツと「隠れ便秘」の話
「夜尿症の治療でアラームを買ったけれど、子供が全然起きなくて親だけが寝不足…」「結局面倒になってやめてしまった」
前回の記事で、アラーム療法は「最も再発率が低い治療法」だとお伝えしましたが、実は「途中でやめてしまう(脱落する)ご家庭が多い」のも事実です。しかし、正しいやり方を知れば、成功率はぐっと高まります。
また、いくら治療をしても治らない場合に疑うべき「意外な原因」についても解説します。
私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、小児科診療において、1個人の意見ではなく、常に科学的根拠(エビデンス)に基づいた診断と治療を最優先にしています。
この記事では、治療が難しいとされるケース(難治性夜尿)について、最新の医学論文レビューやNICEガイドライン [CG111] の知見を基に、ご家庭で実践できる具体的な工夫と、医療機関でチェックすべきポイントを詳しく解説します。
1. アラーム療法成功のカギは「親の覚悟」?
アラーム療法のエビデンス(科学的根拠)は強力ですが、開始して最初の1〜2ヶ月はご家族にとって試練の時期です。
なぜなら、アラーム療法は「アラームが鳴る → 自分で起きて止める」という一連の動作を脳に学習させる治療法ですが、夜尿症のお子様は「睡眠からの覚醒障害(起きるのが苦手)」を合併していることが非常に多いからです。
アラームが鳴りっぱなしなのに子供は爆睡。結局、親がアラームを止め、子供のパンツを履き替えさせて、子供は寝たまま終了…。
これでは脳が「起きる練習」になっていません。最初の数週間は、「親御さんがアラームで起き、お子様を揺り起こして完全に覚醒させ、自分でアラームを止めさせる」サポートが必須となります。
2. 子供が起きない時の対処法(条件付けの強化)
お子様がなかなか起きられない場合、以下のステップを試してみてください。これらは行動療法の観点から有効とされています。
寝る前のイメージトレーニング
寝る直前に、以下の手順を頭の中でリハーサル(または実際に動作)します。
- 「アラームが鳴る音が聞こえる」と想像する
- 「目が覚める」と自分に言い聞かせる
- 「トイレに行く」動作をイメージする
スモールステップでの報酬
「おねしょをしなかった」ことではなく、「アラームが鳴った時に自分で起きられた」ことに対してシールを貼るなどの報酬を与えます。まずは「起きること」を目標にしましょう。
3. 治らない最大の原因「隠れ便秘」とは
「アラームも薬も試したけれど治らない」。そんな時に私たちが真っ先に疑うのが「便秘」です。実は、夜尿症治療において便秘の管理は極めて重要です。
直腸(便がたまる場所)と膀胱は隣り合わせです。便秘で直腸が膨らむと、膀胱を後ろから圧迫してしまい、膀胱が十分におしっこを溜められなくなります。
さらに、便秘は膀胱の過敏性を高め、勝手な収縮(膀胱過活動)を引き起こすことも研究で分かっています。
「うちは毎日出ているから大丈夫」と思われるかもしれませんが、コロコロ便だったり、すっきり出し切れていない場合も「隠れ便秘(便の停滞)」の可能性があります。当院では、超音波検査(エコー)で直腸の便のたまり具合を確認し、必要であれば積極的に便秘治療を行います。
実際に、便秘を治しただけで夜尿症が改善したという医学的報告は多数存在します。
4. 治療の効果判定と次のステップ
アラーム療法や薬物療法を行っても改善が見られない場合(難治性)、以下の可能性を再評価します。
- アラームの使用方法が間違っていないか?(親が止めていないか)
- 便秘が見逃されていないか?
- 日中のお漏らしはないか?(昼間尿失禁がある場合は別の薬が必要になることがあります)
- 睡眠時無呼吸(いびき)などの合併症はないか?
3ヶ月続けても効果が見られない場合は、治療法の変更や併用(アラーム+薬)を検討するタイミングです。
※アラーム療法を再開・検討される場合、当院ではアワジテック社「ピスコール」の医療機関限定の安価なレンタルプランもご案内しています。
5. まとめ:あきらめる前に一度ご相談を
夜尿症の治療はマラソンのようなもので、根気が必要です。しかし、正しいフォーム(治療法)で走れば、必ずゴールは近づきます。
特に「アラーム療法がうまくいかなかった」「薬が効かなかった」という方は、使い方の見直しや便秘の治療を加えることで状況が変わることが多々あります。長田こどもクリニックでは、お子様とご家族の生活スタイルに合わせ、無理なく続けられる「エビデンスに基づいた再プラン」をご提案します。
診療案内・ご予約
長田こどもクリニックでは、一般診療の時間内でも夜尿症のご相談を承っておりますが、詳細な問診が必要なため、WEB予約の際に「夜尿症相談」と記載いただくか、お電話でお問い合わせいただけるとスムーズです。
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Bedwetting in under 19s: approach to assessment and management [CG111]. (Published: 28 October 2010. Last updated: 08 September 2023)
- Hodges SJ, Anthony EY. Occult megarectum--a commonly unrecognized cause of enuresis. Urology 2012; 79:421.(便秘と夜尿症の関連について)
- Kwak KW, et al. Efficacy of desmopressin and enuresis alarm as first and second line treatment... J Urol 2010.

