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【杉並区荻窪の小児科医が解説】アトピー性皮膚炎のかゆみがぶり返すお子様へのJAK阻害剤。

塗り薬で良い状態。でも、ステロイドがなかなか減らせない方へ

「調子の良い日が増えて、肌もずいぶんきれいになった」
「ステロイドを塗る回数も、以前よりずっと減ってきた」

当院では、アトピー性皮膚炎の症状をコントロールするための「プロアクティブ療法」を治療の基本としています。これは、一見きれいになった肌にも週に数回、塗り薬を続けることで、症状の“火種”を抑え込み、良い状態を長くキープするための治療法です。

この治療によって、多くのお子様が穏やかな毎日を取り戻しています。しかし、保護者の方とお話していると、こんな声も聞こえてきます。
「ステロイドの量をこれ以上は減らせない。いつになったらやめられるんだろう…」

そう、プロアクティブ療法でかなり良い状態を維持できているけれど、塗り薬を減らせない、いわば「あともう一歩」の状態で悩んでいるご家庭がごくたまにいらっしゃいます。

この記事では、そんなお子様と保護者の方のために、治療の新たな選択肢となる「JAK(ジャック)阻害薬」という“飲むタイプ”のお薬について、専門の杉並区荻窪にあります長田こどもクリニックの小児科医が丁寧に解説していきます。

【この記事のポイント】

この記事は、塗り薬や保湿といった基本治療をしっかり行っていることを前提としています。JAK阻害薬は、あくまで基本治療でコントロールが難しい場合に検討する「次のステップ」のお薬です。

新しい選択肢「JAK阻害薬」とは?アトピーの“炎症”を中から消す飲み薬

アトピー性皮膚炎の皮膚では、免疫が過剰に働き、「炎症を起こせ!」「かゆみを出せ!」という指令(サイトカイン)が絶えず出されています。

この指令は、「JAK(ヤヌスキナーゼ)」という“伝達係”を介して細胞の中に伝わります。JAK阻害薬は、この伝達係であるJAKの働きをブロックすることで、炎症やかゆみの指令を阻害するお薬です。

塗り薬が外から“火消し”をするのに対し、JAK阻害薬は体の中から火事が起きる原因(指令の伝達)そのものを止めるイメージです。

一番の特徴は「かゆみ」への速効性

JAK阻害薬のすごいところは、つらい「かゆみ」に対して、非常に速く効果が現れる点です。早いお子様では、飲み始めて数日後には「夜、掻きむしることがなくなった」「ぐっすり眠れるようになった」と、ご家族が変化することも少なくありません。

これは、かゆみを感じる神経に直接働きかけ、「かゆみスイッチ」をオフにしてくれるためです。この「掻かなくなる」という状態が、結果的に皮膚の炎症をさらに改善させる、という良い循環を生み出すきっかけになります。

お子様に使える3種類のJAK阻害薬

現在、小児のアトピー性皮膚炎に使えるJAK阻害薬は3種類あります。それぞれ対象年齢や特徴が異なります。

オルミエント®(バリシチニブ)

2歳から使える、一番小さな子向けの飲み薬

  • 対象年齢:2歳以上
  • 特徴:現在、最も小さなお子様から使える唯一の経口JAK阻害薬です。錠剤が苦手な場合でも、お薬を砕いて水に溶かして飲ませることができるのが大きなメリットです。

(臨床試験データ (BREEZE-AD-PEDS試験) / PMID: 35948020)

リンヴォック®(ウパダシチニブ)

12歳から使える、お兄さん・お姉さん向けの飲み薬

  • 対象年齢:12歳以上(かつ体重30kg以上)
  • 特徴:アトピー性皮膚炎との関連が深い「JAK1」を強力にブロックします。ゆっくり溶けるタイプのお薬なので、砕かずに飲む必要があります。

(臨床試験データ (Rising Up試験) / PMID: 36724917)

サイバインコ®(アブロシチニブ)

12歳から使える、もう一つの選択肢

  • 対象年齢:12歳以上
  • 特徴:こちらもJAK1をターゲットにしたお薬で、特にかゆみへの効果発現が速いというデータがあります。

(臨床試験データ (JADE TEEN試験) / PMID: 34324802)

お薬を始める前に知っておきたいこと

新しいお薬には、期待と同時に不安もあるかと思います。安全に治療を進めるために、大切なポイントをQ&A形式で解説します。

Q1. どんな副作用が考えられるの?

JAK阻害薬は免疫の働きに少し影響を与えるため、注意すべき点もあります。一番多いのは、鼻水やのどの痛みといった風邪のような症状(上気道感染)です。その他、思春期のお子様ではニキビが出やすくなったり、飲み始めに吐き気を感じたりすることがあります。頻度は高くなく、多くは一時的なものですが、気になる症状があればすぐに主治医に相談することが大切です。

Q2. なぜ、始める前にたくさんの検査が必要なの?

これは、「お薬を安全に使うための大切な健康診断」です。副作用のリスクを最小限にするため、治療開始前に以下の検査が必須となります。

  • 感染症のチェック:体の中に結核菌やB型肝炎ウイルスが隠れていないかを、血液検査や胸のレントゲン写真で確認します。
  • 血液検査:貧血がないか、肝臓や腎臓の機能は正常かなどを調べます。
  • ワクチン接種歴の確認:生ワクチン(麻疹風疹、水痘など)は治療中は接種できません。必要なワクチンは治療開始前に済ませておくことが推奨されます。

これらの検査で安全性を確認した上で治療を始め、開始後も定期的に検査を行いながら、慎重に経過をみていきます。

まとめ:当院のJAK阻害薬に対する考え方

ここまでJAK阻害薬について解説してきましたが、当院のスタンスを改めてお伝えします。

私たちは、このお薬を「最初から誰もが使う薬」とは考えていません。あくまで、

① まずは、保湿とステロイド外用薬によるプロアクティブ療法をしっかりと行うこと。
② それでも、かゆみがぶり返して日常生活に支障が出たり、ステロイドをなかなか減らせなかったりする『あと一歩』の状態が続くこと。

この2つの条件が揃った場合に、ご本人・ご家族としっかり話し合い、次の選択肢としてJAK阻害薬を慎重にご提案します。

JAK阻害薬は、塗り薬などの基本治療の代わりになるものではなく、基本治療を支えるための補助的なお薬です。内服薬で体の中から炎症をコントロールし、皮膚の状態が安定することで、最終的には塗り薬の量を減らし、いずれは内服薬もお休みすること(寛解)を目指すのが当院の目標です。

終わりに:ぜひ一度ご相談ください

アトピー性皮膚炎の治療は、この数年で大きく進歩しました。治療の選択肢は、確実に増えています。

「塗り薬だけでは、どうしてもぶり返してしまう」「この子のかゆみを、もっと根本的に抑えてあげたい」。もし、そうお考えでしたら、ぜひ一度、当院へご相談ください。お子様一人ひとりの症状とご家庭の状況に合わせた最適な治療法を、一緒に見つけていきましょう。

長引くアトピー性皮膚炎の治療は、新たな治療薬が増え、ステロイドの依存度も以前と
比較すると明らかに低下してきています。それでも最初の大事な治療はステロイドです。
治療は明らかに進歩し、再発は防げる時代になりました。

もし、この記事を読んで
「うちの子の治療も、一度見直してみたい」
「専門家と一緒に、本気で治していきたい」
そう感じていただけたなら、ぜひ一度、当院にご相談ください。

私たち専門家が、お子さんの健やかな肌と、ご家族の笑顔あふれる毎日を取り戻すため、
全力でサポートさせていただきます。
練馬方面からもお車で15分程度でアクセス可能です。駐車場も完備しておりますので、お車でも安心してご来院いただけます。

予約はこちらから
https://c.inet489.jp/osd2030/yoyaku/login.cgi?recno=&birth=

長田こどもクリニック
杉並区南荻窪1-31-14
営業時間:平日毎日よる8時まで、土曜日は13時まで
電話番号:03-3334-2030
https://www.osadaclinic.com/

悩みのループは、今日で終わりにしましょう。
その一歩を、心からお待ちしています。

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