【小児科医が徹底解説】子どものニキビ、放置は危険!跡を残さないための最新治療は、小児皮膚科に強い当院へ|杉並区・荻窪
私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、これまで小児アトピー性皮膚炎の治療に力を入れてまいりました。その経験と知識を活かし、この度、お子さまの「にきび(尋常性ざ瘡)」治療にも本格的に取り組んでまいります。インターネット上には様々な情報が溢れていますが、当院のブログは**「尋常性痤瘡・酒皷治療ガイドライン 2023 年改訂版」**など、明確なエビデンスに基づいた信頼できる情報だけを発信することをお約束します。お子さまの肌を、そして未来を守るため、正しい知識を一緒に学んでいきましょう。
目次
はじめに:「ニキビは青春のシンボル」という大きな誤解
「ニキビは思春期になれば誰でもできるもの」「放っておけば自然に治る」— 。こうした考えは、残念ながら大きな誤解です。ニキビは、日本の90%以上の人が経験する非常にありふれた病気ですが、同時に、**れっきとした「尋常性ざ瘡」という名前の皮膚疾患**です。
なぜ治療が必要なのでしょうか?それは、炎症が強く起きたニキビは、治った後に**「瘢痕(はんこん)」、いわゆる“ニキビあと”を残す**可能性があるからです。一度できてしまった瘢痕(クレーター状のへこみや盛り上がり)を、後から完全に元通りにすることは非常に困難です。研究によっては、ニキビに悩む人の20〜30%に瘢痕が残るとも言われています。しかし、ガイドラインでは**「早期の治療により瘢痕が予防できるというデータが示されている」**と明記されています[1]。
つまり、ニキビ治療の最大の目標は、単に今あるニキビを治すことだけでなく、将来にわたって美しい肌を保つために、「ニキビあと」を作らせないことなのです。
ニキビはなぜできる?全ての始まりは「面皰(コメド)」
ニキビは、顔や胸、背中など、皮脂腺が多い場所の「毛穴(毛包)」に起こる慢性的な炎症です。その発症には、主に3つの要因が複雑に関わっています。
- ① 毛穴の出口の角化異常:通常、皮膚の細胞はターンオーバーによって自然に剥がれ落ちます。しかし、何らかの原因で毛穴の出口の角質が厚くなると、出口が塞がれてしまいます。
- ② 皮脂分泌の増加:思春期になると、性ホルモンの影響で皮脂の分泌が活発になります。出口が塞がった毛穴の中に、皮脂がどんどん溜まっていきます。
- ③ アクネ菌(C. acnes)の増殖:皮脂を栄養源とする皮膚の常在菌「アクネ菌」が、毛穴の中で過剰に増殖します。増殖したアクネ菌は、炎症を引き起こす物質を作り出します。
この連鎖の出発点であり、全てのニキビの“芽”となるのが、毛穴が詰まった状態である**「面皰(めんぽう、コメド)」**です。ガイドラインでも、面皰はニキビの**「初発疹」**と定義されています。炎症のない白ニキビ・黒ニキビの段階から治療を始めることが、赤ニキビへの進展を防ぎ、最終的にニキビあとを残さないために最も重要です。
ニキビ治療の2つのフェーズ:「急性炎症期」と「維持期」
現在のニキビ治療で最も重要な考え方は、治療を2つの期間(フェーズ)に分けて考えることです。それは、目に見える赤ニキビを積極的に治す**「急性炎症期」**と、ニキビが良くなった後のきれいな肌を保つための**「維持期」**です。この2つのフェーズを正しく理解することが、ニキビを克服し、再発を防ぐための鍵となります。
- 急性炎症期のゴール:今ある赤ニキビ・膿を持ったニキビを、できるだけ早く、そしてきれいに治し、炎症を鎮めること。(期間の目安:約3ヶ月)
- 維持期のゴール:炎症が治まった後も、ニキビの“芽”である「面皰」や、目に見えない「微小面皰」を治療し続け、ニキビが再発しない肌の状態を保つこと。(期間の目安:数ヶ月〜数年)
【フェーズ1:急性炎症期】赤ニキビを速やかに抑える治療
炎症を起こして赤くなっているニキビや、膿を持っているニキビが目立つこの時期は、まず炎症を強力に抑え、ニキビあとが残るリスクを最小限にすることが最優先です。ガイドラインでは、作用の異なる薬を組み合わせる**「併用療法」**が強く推奨されています。
標準的な治療法
アダパレン(ディフェリン®︎)や過酸化ベンゾイル(ベピオ®︎)といった、毛穴の詰まりを改善する薬をベースに、炎症を抑える**抗菌薬(塗り薬または飲み薬)**を組み合わせて使用します。
- アダパレン + 外用抗菌薬:アダパレンで毛穴の詰まりを治しながら、抗菌薬で炎症を抑えます。相乗効果で、より早く、より高い効果が期待できます[2]。
- 過酸化ベンゾイル + 外用抗菌薬:過酸化ベンゾイルの殺菌作用と、抗菌薬の作用で、強力にアクネ菌を減らします。過酸化ベンゾイルとクリンダマイシンという抗菌薬が一緒になった配合剤(デュアック®︎配合ゲル)も広く使われます。
- アダパレン + 過酸化ベンゾイル + 抗菌薬:中等症から重症の場合、これら3種類の作用を持つ薬を組み合わせて治療することもあります。アダパレンと過酸化ベンゾイルが一緒になった配合剤(エピデュオ®︎ゲル)に、飲み薬の抗菌薬を併用することもあります[3]。
重要:抗菌薬は、長期間使用すると薬剤耐性菌のリスクがあるため、ガイドラインでは**原則として3ヶ月以内**の使用が推奨されています。炎症が落ち着いたら、次の「維持期」の治療へと移行します。
【フェーズ2:維持期】ニキビの“芽”を摘み、再発を防ぐ最も重要な治療
赤ニキビが治まって一安心…ここで治療をやめてしまうと、残念ながらほとんどの場合、ニキビは再発してしまいます。なぜなら、目には見えなくても、皮膚の下にはニキビの“芽”である**「面皰(コメド)」**や、さらにその初期段階である**「微小面皰」**がまだたくさん残っているからです。
この維持療法を根気強く続けることが、ニキビのできにくい、安定した肌を保つための最大の秘訣です。維持療法では、耐性菌のリスクがある抗菌薬は中止し、毛穴の詰まりを改善する以下の薬を継続して使用します。
- アダパレン(ディフェリン®︎ゲル):面皰や微小面皰に対する高い効果が証明されており、維持療法の第一選択薬です。治療を中止した場合に比べて、再発を有意に抑制することが分かっています[4]。
- 過酸化ベンゾイル(ベピオ®︎ゲル):アダパレンと同様に面皰を改善する効果があり、耐性菌の心配もないため、維持療法に適しています。
- アダパレンと過酸化ベンゾイルの配合剤(エピデュオ®︎ゲル):2つの有効成分で、より強力に再発を予防します。
治療開始時に知っておくべきこと:初期の刺激症状(赤み・皮むけ)との付き合い方
アダパレンや過酸化ベンゾイルは非常に効果的な薬ですが、使い始めの**最初の2週間〜1ヶ月**に、多くの人が**赤み、ヒリヒリ感、乾燥、皮むけ(皮膚剥離)**といった刺激症状を経験します。これは薬が効いている証拠であり、毛穴の詰まりを改善する「ピーリング作用」によるものです。多くの場合、治療を続けるうちに肌が慣れて、症状は自然に軽快していきます。
- まずは少量から始める:最初は米粒くらいの量を気になる部分にだけ塗り、徐々に範囲と量を広げていく。
- 保湿を徹底する:薬を塗る前後に、低刺激性でノンコメドジェニックな保湿剤をしっかり使い、肌のバリア機能をサポートする。
- 医師に相談する:刺激が強くて続けられない場合は、自己判断でやめずに、必ず医師に相談してください。塗る回数を1日おきに減らしたり、より刺激の少ない薬に変更したりと、対策を一緒に考えます。
毎日のスキンケアでできること:洗顔・保湿・紫外線対策
薬による治療と並行して、日々の正しいスキンケアを行うことも、ニキビの改善と予防に欠かせません。
- 洗顔:1日2回、低刺激性の洗顔料をよく泡立てて、優しく洗うことが推奨されています[1]。ゴシゴシこするのは、皮膚のバリア機能を壊し、かえってニキビを悪化させる原因になります。
- 保湿:ニキビ肌は、皮脂が多い一方で、水分が不足して乾燥していることが多い状態です。油分が少なく、「ノンコメドジェニックテスト済み」と表示された製品を選び、しっかりと保湿しましょう。
- 紫外線対策:紫外線は、ニキビの炎症を悪化させたり、治った後の色素沈着(シミ)の原因になったりします。日中外出する際は、ノンコメドジェニックテスト済みの日焼け止めを使用しましょう。
ニキビに関するQ&Aコーナー
A1. 自己判断で無理に潰すのは絶対にやめてください。皮膚を傷つけ、炎症を悪化させたり、細菌が入り込んでさらにひどくなったり、瘢痕(あと)が残る原因になります。医療機関では、「面皰圧出」という、清潔な器具を用いて毛穴に詰まった皮脂を押し出す処置を行うことがあります。これは、ガイドラインでも選択肢の一つとして推奨されています[1]。
A2. 「チョコレートを食べるとニキビができる」といった特定の食べ物とニキビの因果関係については、現時点で明確な科学的根拠はありません。そのため、ガイドラインでは「特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない」とされています[1]。ただし、極端な偏食は避け、バランスの良い食事を心がけることは、肌の健康全体にとって重要です。
長田こどもクリニックのニキビ治療:皮膚の専門家として、親子に寄り添う
お子さまのニキビ治療は、根気のいる長い道のりになることもあります。特に、症状が良くなった後も治療を続ける「維持療法」は、ご本人とご家族の深い理解と協力が不可欠です。当院は、アトピー性皮膚炎の治療で培った、慢性的な皮膚の炎症をコントロールするノウハウと、お子さまへの丁寧なスキンケア指導、そして保護者の皆さまへのきめ細やかな説明の経験を、ニキビ治療にも最大限活かしていきます。
お子さま一人ひとりの肌の状態、ライフスタイル、そして悩みに耳を傾け、ご本人とご家族が納得して、前向きに治療を続けられるよう、最適な治療計画を一緒に立てていきます。「こんなことで受診していいのかな?」などと、ためらう必要は全くありません。
部活や塾で忙しいお子さまも、お仕事でお忙しい保護者の方も、安心して受診できるよう、当院は柔軟な診療体制を整えています。
- 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
- 土曜日も、13時まで診療
- クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備
杉並区荻窪で、いつでも頼れるかかりつけ医として、皆さまをお待ちしています。
参考文献
- 1)日本皮膚科学会ガイドライン. 尋常性痤瘡・酒皷治療ガイドライン 2023.
- 2)Wolf JE, et al. Efficacy and tolerability of combined topical treatment of acne vulgaris with adapalene and clindamycin: a multicenter, randomized, investigator-blinded study. J Am Acad Dermatol. 2003;49(3 Suppl):S211-7.
- 3)Dréno B, et al. Combination therapy with adapalene-benzoyl peroxide and oral lymecycline in the treatment of moderate to severe acne vulgaris: a multicentre, randomized, double-blind controlled study. Br J Dermatol. 2011;165(2):383-90.
- 4)Thiboutot DM, et al. Adapalene gel, 0.1%, as maintenance therapy for acne vulgaris: a randomized, controlled, investigator-blind follow-up of a recent combination study. Arch Dermatol. 2006;142(5):597-602.
長田こどもクリニック
杉並区荻窪の小児科・アレルギー科