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【小児科医が徹底解説】突発性発疹の症状・経過のすべて|熱・発疹・不機嫌の原因と正しい対処法|長田こどもクリニック

南荻窪の長田こどもクリニック、副院長の長田洋資です。

今回は多くの赤ちゃんが人生で初めて高熱をだした、ひょっとしたら「突発性発疹(とっぱつせいほっしん)」かもしれません。発熱をした時点では鑑別することは少し難しいのですが、喉に特徴的な所見が出ることもありますので診察をすれば判断することが出来ることもあります。

この記事では、突発性発疹について詳しく解説します。特徴的な症状の経過から、ご家庭での具体的なケア、注意すべき合併症、そして「解熱後の不機嫌」の理由まで、具体的な数値を交えながらお話しします。

私は現在も聖マリアンナ医科大学小児科で講師を継続しながら現在クリニックの外来も行っています。より専門的な知識を地域の皆様に提供できればと考えています。

私は一般小児科とPICU(小児集中治療)、またNICU(新生児集中治療)と多くの現場で働いてきました。その中でも感染症は日常診療で必須の知識です。感染症の本でも私が一部を執筆させていただいています。

1. 突発性発疹とは?

突発性発疹はお子さまが成長していく過程で、ほとんど全員が経験する感染症です。出生後の初感染はヒトヘルペスウイルス6Bにより引き起こされると言われており、始めての感染時に典型的な発疹を呈するのは約20%と報告されています。残りは発疹や局所症状がでず発熱だけのこともあります。場合によっては不顕性感染といって、全く症状がでないまま感染していること約2−3割とされています。

原因ウイルスは2種類

突発性発疹はウイルス感染症で、主な原因はヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6B)です。あまり知られていませんが、ヒトヘルペスウイルス7型(HHV-7)というウイルスが原因で2回目の突発性発疹を起こすこともあります。突発性発疹は一回しか起こさないと思われている方が多いですが、私も研修医時代に先輩医師からひっかけ問題で出されたことを思い出します。

なぜ赤ちゃんに多いの?

生後6ヶ月頃までの赤ちゃんは、お母さんのお腹の中や母乳からもらった免疫(移行抗体)に守られています。しかし、その免疫が徐々に失われる生後6ヶ月から1歳半頃が、このウイルスに初めて感染するピーク年齢となります。 2歳までにほぼ全てのお子さまがHHV-6Bに感染すると言われており、まさに「赤ちゃんの病気」の代表格です。HHV-7による好発年齢はHHV-6Bより若干遅く、幼児期に感染のピークがあります。

どこでうつるの?

主な感染経路は、ご家族など身近な大人からの唾液を介した接触感染(飛沫感染)です。大人は子どもの頃に感染しているため症状は出ませんが、既に感染している成人の唾液中にウイルスを排出していることがあります。そのため、感染を完全に予防することは非常に困難です。

特に季節性はなく、1年間通して発生します。

2. これが突発性発疹の典型的な経過を説明!症状の全貌を時系列で徹底解説します。

「熱」と「発疹」が現れるタイミングがはっきりと分かれていることです。この典型的な経過を知っておくことが、親御さんの安心に繋がります。

【ステップ1】潜伏期間(感染後 約2週間)

ウイルスに感染してから症状が出るまで、約2週間の潜伏期間があります。この間は無症状です。

【ステップ2】発熱期(3〜4日間)
  • 急な症状:38℃〜40℃の急な高熱が出ます。

  • 熱のわりに元気: 最大の特徴は高熱にもかかわらず、比較的機嫌が良く、水分や食事も摂れるお子さまが約60〜80%を占めます。

  • 熱以外の症状:

    • 下痢: 約20〜30%のお子さまに、軟便や水様便が見られます。

    • まぶたの腫れ: 軽くまぶたがむくんだり、目が腫れぼったく見えることがあります(眼瞼浮腫)。

    • 咳・鼻水: 軽い咳や鼻水を伴うこともあります。

    • 大泉門の膨隆: 頭のてっぺんの骨がまだ閉じていない赤ちゃん(乳児)では、その部分(大泉門)が少し張って膨らむことが約10〜20%で見られます。

    • 永山斑(ながやまはん): 少数ですが、口の中の天井部分(軟口蓋)に赤い小さな発疹が見られることがあります。

【ステップ3】解熱と発疹期(熱が下がってから数日間)
  • ストンと解熱: 3〜4日続いた熱が平熱に下がります。

  • 解熱と同時に発疹が出現:ここ確定診断となります。熱が下がったタイミングで、お腹や背中を中心に、赤く細かい、平坦な、あるいは少しだけ盛り上がった発疹が広い範囲に出てきます。その後、顔や首、手足へと広がっていきます。

  • 発疹の特徴:

    • かゆみは、ほとんどありません。(水ぼうそうや麻疹、あせもとの大きな違いです)

    • 3日前後で、跡を残さずスーッときれいに消えていきます。

【ステップ4】不機嫌のピーク(解熱後)

熱が下がって発疹が出てきて一安心…と思いきや、半数以上のお子さまここから数日間、機嫌が悪くなります。ぐずりがひどく、夜泣きをしたり、何をしても泣き止まなかったりするため、「何か他の病気になったのでは?」と心配される親御さんが後を絶ちません。原因は解明されていません。 これは病気の自然な経過の一部であり、数日でおさまりますのでなんとかあやしてしのぎましょう。

3. 注意すべき合併症【こんな時はすぐに受診を】

ほとんどは自然に治る予後良好な病気ですが、ごくまれに注意すべき合併症があります。

  • 熱性けいれん(最も多い合併症) 突発性発疹は、他の発熱性疾患と比べて熱性けいれんを合併する頻度が高いことが知られています。その割合は約10〜15%にのぼります。急な高熱に伴い、白目をむいて手足を硬直させたり、ガクガクさせたりします。少しむずかしい話になりますがHHV-6は神経親和性DNAウイルスでてんかん症候群との関連性が指摘されています。

  • 【けいれん時の対応】

    1. 慌てずに寝かせて衣服を緩める。

    2. 顔を横向きにし、吐いたもので喉を詰まらせないようにする。(決して口の中に指をいれてかき出そうとしてはいけません。)

    3. 時間を計ります。

    4. けいれんが5分以内で収まれば、おちついて医療機関を受診してください。5分以上継続したときは救急車をよんでください。

  • 脳炎・脳症(極めてまれ) 頻度は非常に低いですが、最も重篤な合併症です。ぐったりして意識がはっきりしない、けいれんが止まらない、またけいれんが止まったあとにいつもの状態に戻らず、変な行動をするとき・目が合わないなどの症状があれば、時間を問わず救急受診が必要です。

4. 診断と治療

  • 診断: 上記の「高熱 → 解熱 → 発疹」という典型的な時間経過をもって臨床的に診断します。そのため、「熱が出たばかりの時点」では確定診断はできず、「熱が下がって発疹が出たので、あれは突発性発疹でしたね」と後から診断がつく病気なのです。ときには特徴的な咽頭の所見に永山斑というものがあり、所見をよくみれば分かることもあります。

  • 治療: 特効薬はありません。ウイルスが自身の免疫力で排除されるのを待つのが基本です。治療は、症状を和らげる「対症療法」が中心となります。高熱でつらそうな時や、眠れない時には解熱剤を使うこともあります。熱性けいれんと解熱剤の使用に関しては関連性はないと言われていますので、迷わず使用して大丈夫です。(以前は解熱剤を使用すると熱性けいれんが起きやすくなるという都市伝説がありました。)

5. ご家庭でできるケア|受診の目安

  • 水分補給: 最も大切です。湯冷まし、麦茶、乳幼児用のイオン飲料、スープなど、お子さまが口にできるものを少量ずつ頻回にあげてください。

  • 食事: 食欲がなければ無理に食べさせる必要はありません。おかゆ、うどん、すりおろしリンゴなど、消化の良いものを。

  • お風呂: 元気であれば必ずしも控える必要はありません。本人がつらそうであれば体を拭いてあげる程度にしましょう。

  • 登園・登校: 熱が下がり、お子さまの機嫌や食欲が普段通りに戻れば、発疹が残っていても登園・登校は可能です。

《すぐに受診が必要なサイン》最初は発熱の原因がなにか分かりませんので、必ず他の病気がないか診察を受けてください。 水分を全く受け付けず、半日以上おしっこが出ていない、ぐったりしていて、あやしても笑わない、けいれんを起こした、呼吸が苦しそう、咳がひどいなどは当然受診をしてください。

6. よくあるご質問(Q&A)

Q1. 突発性発疹には2回かかるのですか?

A1. はい、かかります。前述の通り、原因ウイルスがHHV-6とHHV-7の2種類あるためです。約10%のお子さまが2回経験すると言われています。一般的に2回目(HHV-7によるもの)の方が症状は軽い傾向にあります。

Q2. 熱だけで、発疹が出ないこともありますか?

A2. はい、あります。ウイルスに感染しても典型的な症状が出ず、ただの風邪のような症状で終わる場合もあります(不顕性感染)。

Q3. 突発性発疹は大人にもうつりますか?

A3. ほとんどの大人は子供の頃に感染して免疫を持っているため、うつることは極めてまれです。しかし、もし未感染の大人が初感染すると、高熱が長引くなど重症化することがあります。

まとめ:初めての高熱を乗り越えるために

突発性発疹は、ほぼすべてのお子さまが経験する病気です。特徴的な経過を知っていれば、「発疹がでたから突発性発疹かな」「今は不機嫌な時期でもしょうがないんだな」と、少し落ち着いて見守ることができるはずです。

私たち長田こどもクリニックは、この南荻窪、杉並区の地域医療を担うクリニックとして、お子さまとご家族の不安にいつでも寄り添いたいと考えています。どんな些細なことでも、心配なことがあればためらわずにご相談ください。

長田こどもクリニック 副院長 長田洋資

不安な時こそ、すぐ相談!平日夜8時まで、働くパパ・ママをサポートします。お子さんの体調不良でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。

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