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専門医が解説:小児アトピー性皮膚炎の自宅ケアと治療【杉並区 長田こどもクリニック】

お子さんのアトピー性皮膚炎でお悩みの保護者の方へ:毎日のスキンケアと上手な付き合い方

「うちの子、肌がカサカサしてかゆそう…もしかしてアトピー?」 「どうケアしてあげたら良いか分からない」

大切なお子さんの肌トラブルは、保護者の方にとって大きな悩みですよね。特に、アトピー性皮膚炎は治りにくいイメージがあり、不安を感じる方もいらっしゃるかと思います。

アトピー性皮膚炎は、適切なスキンケアと治療によって、症状をコントロールし、良い状態を保つことができる病気です。このブログでは、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインに基づき、ご家庭でできる毎日のスキンケアや、日常生活での注意点について、分かりやすくご説明します。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎は、**「増悪・軽快を繰り返す、かゆみのある湿疹を主病変とする慢性的な病気」**です。アレルギー体質や皮膚のバリア機能の低下が関わっていると考えられています。

主な症状

  • 強いかゆみ
  • 乾燥した湿疹(赤み、カサカサ、ブツブツなど、時にジクジク)
  • 皮膚が厚くなる(慢性化した場合)

これらの症状が、乳児期には顔や頭、体幹、手足の関節の表側など、幼児期以降は首、肘や膝の裏側など、年齢によって特徴的な部位に出やすい傾向があります。またアトピー性皮膚炎の湿疹は、左右対称性(体の両側に同じような部位に)に出現することが多いのは、特徴の一つです。

アトピー性皮膚炎って何でしょう?

なぜアトピー性皮膚炎になるの?(原因)

アトピー性皮膚炎の原因は一つではなく、様々な要因が複雑に絡み合っています。

  1. 皮膚のバリア機能の低下: 健康な皮膚は、外部からの刺激(アレルゲン、乾燥、細菌など)の侵入を防ぎ、内部からの水分の蒸発を防ぐ「バリア機能」を持っています。アトピー性皮膚炎の患者さんでは、このバリア機能が生まれつき弱いことが多く、様々な刺激が皮膚の中に入り込みやすくなっています。
  2. アレルギー体質: 食べ物やダニ、ハウスダスト、花粉などのアレルゲンに対してIgE抗体を作りやすい体質(アトピー素因)がある方もいます。
    ですので当院では皮膚のみでなく喘息、鼻炎、食物アレルギーのアレルギーの総合診療を行います。
  3. 免疫のバランスの乱れ: 皮膚の中で免疫細胞のバランスが崩れ、炎症が起こりやすくなっています。
  4. 様々な悪化因子: 汗、乾燥、衣類の摩擦、ストレス、特定の食品、微生物などが症状を悪化させることがあります。

遺伝的な要素に加え、これらの要因が組み合わさって発症・悪化すると考えられています。

ご家庭でできる!毎日のスキンケア(基本中の基本)

アトピー性皮膚炎の治療の柱は、「スキンケア」「薬物療法」「悪化因子の除去」の3つです。中でも、ご家庭で毎日行えるスキンケアは、アトピー性皮膚炎の症状を安定させ、再燃を防ぐために最も重要と言っても過言ではありません。

1. 入浴・洗浄

皮膚を清潔に保つことは、皮膚の上の汚れや汗、原因物質などを洗い流し、皮膚の負担を減らすために大切です。

  • 毎日お風呂に入りましょう: 汚れや汗をその日のうちに洗い流すことが基本です。
  • お湯の温度はぬるめに: 熱すぎるお湯(40℃以上)は、皮膚のバリア機能を低下させ、かゆみを増強させることがあります。38~39℃くらいのぬるめのお湯にしましょう。時間は3〜5分が良いです。
  • 石鹸は「よく泡立てて」優しく: 石鹸は、皮膚の汚れを落とすために有効ですが、洗浄力が強すぎると必要な皮脂まで取り去ってしまいます。低刺激性の石鹸や洗浄剤を選び、手のひらや泡立てネットで十分に泡立ててから使いましょう。
  • 泡で「なでるように」洗う: ゴシゴシ擦る必要はありません。泡を肌に乗せ、手のひらで優しくなでるように洗います。ナイロンタオルなどで擦るのは厳禁です。
  • 石鹸成分をしっかり洗い流す: 石鹸成分が肌に残らないよう、十分にすすぎましょう。
  • お風呂から上がったら「すぐに」保湿: タオルで水分を優しく抑えるように拭いたら、体が乾ききる前に(目安として5~10分以内)保湿剤を塗りましょう。

2. 保湿

アトピー性皮膚炎の治療方法乾燥はアトピー性皮膚炎の最大の敵です。保湿剤で皮膚に水分と油分を補い、皮膚のバリア機能を助けることが非常に重要です。

  • 1日複数回、欠かさず塗る: 朝晩の入浴後はもちろん、日中も乾燥が気になるときや、着替えるときなど、こまめに塗りましょう。最低でも1日2回は塗りたいところです。
  • タイミングはお風呂上がりがベスト: 皮膚に水分が多く含まれている入浴後すぐに塗るのが最も効果的です。
  • 「擦り込まずに」優しく塗る: 皮膚のシワに沿って、優しく伸ばすように塗りましょう。ゴシゴシ擦ると皮膚に負担がかかります。
  • 「たっぷり」塗る: ケチらず、皮膚がテカテカするくらいの量を塗るのが目安です。量が少ないと十分な保湿効果が得られません。全身に塗る場合、子供でも1回の使用量は2~5g(ティッシュペーパー1枚分~野球ボール大)程度が必要と言われています(保湿剤の種類によります)。
  • 全身に塗りましょう: 湿疹が出ていない健康そうに見える皮膚も、アトピー性皮膚炎の患者さんではバリア機能が低下していることが多いです。湿疹のある部分だけでなく、全身に保湿剤を塗り広げましょう。
  • 保湿剤の種類について: ローション、クリーム、軟膏など様々な種類があります。季節や皮膚の状態、塗る部位によって使い分けることも有効です。どの保湿剤が良いか迷う場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

日常生活での注意点

  • 汗はすぐに拭くか洗い流す: 汗は皮膚の刺激になり、かゆみを増強させます。汗をかいたら、濡らしたタオルで優しく拭き取るか、可能であればシャワーで洗い流しましょう。
  • 衣類は刺激の少ないものを: 直接肌に触れる衣類は、木綿など肌触りの良い天然素材を選びましょう。ウールや化学繊維は刺激になることがあります。新しい服は一度洗ってから着せましょう。
  • 爪は短く切る: かゆくても掻き壊さないように、爪はいつも短く丸く切っておきましょう。
  • 部屋の環境を整える: 乾燥する季節は加湿器を使うなどして、適切な湿度(50~60%)を保ちましょう。夏場は冷房で温度を調整し、汗をかきすぎないようにします。ハウスダストやダニ対策として、こまめな掃除や寝具の洗濯も重要です。
  • 食物アレルギーについて: 食物アレルギーがアトピー性皮膚炎の原因や悪化因子となることもありますが、安易な自己判断での食事制限は、栄養不足を招く可能性があり危険です。 食物アレルギーが疑われる場合は、必ず医師の診断のもと、適切な検査を行い、必要な場合のみ医師の指示のもとで制限を行いましょう。不必要な食物除去は行わないのが原則です。
  • ストレスや睡眠: ストレスや睡眠不足も症状を悪化させる要因となり得ます。お子さんがリラックスできる時間を作ったり、十分な睡眠がとれるように生活リズムを整えたりすることも大切です。

治療について(スキンケアと組み合わせて)

アトピー性皮膚炎の治療では、上記のスキンケアに加え、皮膚の炎症を抑えるための薬物療法が行われます。

  • 炎症を抑える薬: ステロイド外用薬が中心です。必要に応じてコレクチム、モイゼルト、タクロリムなどの薬剤を適切に使用することで、湿疹やかゆみを効果的に抑えることができます。最新の薬剤が多く発売されていますが、古くから使われるステロイドは適切に使うことで安全に使用することが出来ますし必ずしも最新の薬剤がベストとは限りません。まずは診察し皮膚の状況に応じて適切な薬剤を選択します。
  • かゆみ止めの薬: 抗ヒスタミン薬などの飲み薬が処方されることもあります。

「ステロイドは怖い」というイメージをお持ちの保護者の方もいらっしゃるかもしれませんが、医師の指示に従い、適切な強さの薬を適切な期間・量で使用すれば、安全性の高いお薬です。症状をしっかり抑え、皮膚の良い状態を保つことが、結果的に薬の使用量を減らすことにもつながります。

自己判断で薬の使用を中止したり、量を減らしたりせず、必ず医師の指示を守って使用してください。

こんな時は当院にご相談ください

  • 毎日のスキンケアを頑張っているのに、湿疹やかゆみが良くならない、悪化している。
  • かゆみがひどくて眠れない、日常生活に支障が出ている。
  • 湿疹から黄色い汁が出ている、カサブタができている、熱があるなど、感染が疑われる場合。
  • スキンケアの方法や薬の使い方に迷っている。
  • 初めてアトピー性皮膚炎と言われた、診断に不安がある。
  • 食物アレルギーが心配。
  • 鼻汁も続くし、湿疹も治らない。

お子さんの皮膚の状態は日々変化します。少しでもご心配なことがあれば、どうぞお気軽に当院にご相談ください。

まとめ:お子さんのアトピー性皮膚炎と上手に付き合うために

アトピー性皮膚炎は、お子さん自身もかゆみで辛い思いをしますし、ケアをする保護者の方も大変だと感じることもあるかと思います。

しかし、毎日の丁寧なスキンケアを基本に、必要に応じて医師の指示に従った薬物療法を行うことで、症状は必ず良くなります。焦らず、根気強く続けることが大切です。

当院では、お子さん一人ひとりの皮膚の状態や生活スタイルに合わせたスキンケアや治療法を、保護者の方としっかり相談しながら一緒に考えていきます。不安なこと、疑問なことがあれば、どんな小さなことでも構いませんのでお気軽にご質問ください。

お子さんの健やかな肌を守るため、私たちがお手伝いさせていただきます。


【引用・参考文献】

【免責事項】

本ブログ記事は、アトピー性皮膚炎に関する一般的な情報提供を目的としており、個々の患者さんの診断や治療を推奨するものではありません。お子さんの症状については、必ず医療機関を受診し、医師の指示に従ってください。

【当院の診療について】

お子さんのアトピー性皮膚炎でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。

https://www.osadaclinic.com/atopic-dermatitis/

予約はこちらからhttps://c.inet489.jp/osd2030/yoyaku/login.cgi?recno=&birth=

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