【皮膚科治療を徹底解説】黒ニキビ・赤ニキビ・黄ニキビの違いと正しい治し方|跡を残さない最新治療|杉並区・荻窪
インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、医学的根拠が不明瞭であったりして、「どれが本当に信頼できる情報なのか分かりにくい」と感じたことはありませんか?私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、そうした保護者の皆さまの不安に応えるため、明確なエビデンス(科学的根拠)に基づいたブログ作成を心がけています。この記事も、**「尋常性痤瘡・酒皷治療ガイドライン 2023 年改訂版」**[1]や**「米国皮膚科学会(AAD)尋常性ざ瘡管理ガイドライン 2024」**[2]など、最新の信頼できる情報を基に、「黒ニキビ」「赤ニキビ」「黄ニキビ」について徹底解説します。
目次
はじめに:「黒ニキビ」と「黄ニキビ」は全くの別物です
お子さまのニキビについて調べる中で、「白ニキビ」「黒ニキビ」「赤ニキビ」「黄ニキビ」といった言葉を耳にしたことがあるかと思います。これらは単なる色の違いではなく、ニキビが進行していく**ステージ(病期)**を示す、医学的に重要な分類です。
特に「黒ニキビ」と「黄ニキビ」は、見た目も原因も、そして**治療法も全く異なります。**
- 黒ニキビ:炎症が起きていない「面皰(コメド)」という状態です。
- 赤ニキビ:炎症が始まった「炎症性皮疹」の初期段階です。
- 黄ニキビ:炎症がさらに進み、膿が溜まった「膿疱(のうほう)」という状態です。
この記事では、これら3つのニキビの正体と、それぞれに対する最新の治療法を、科学的根拠に基づいて徹底的に解説します。これらの違いを理解することが、ニキビあとを残さないための第一歩です。
【第1段階】黒ニキビ(開放面皰)とは?:酸化した「毛穴の詰まり」
黒ニキビは、鼻の頭や小鼻、Tゾーンによく見られる、毛穴が黒くポツポツと見える状態です。これは医学的には**「開放面皰(かいほうめんぽう)」**と呼ばれます。
すべてのニキビの始まりは、「白ニキビ(閉鎖面皰)」という、毛穴が角質で完全に閉じてしまい、中に皮脂が溜まった状態です(詳しくはこちらの記事をご覧ください)。この白ニキビの毛穴が開き、溜まった皮脂や角質が空気に触れると、**酸化して黒く変色**します。これが黒ニキビの正体です。
黒ニキビは、白ニキビと同じく、まだ炎症を起こしていない「ニキビの芽」の段階です。しかし、これを放置すると、毛穴の中でアクネ菌が増殖し、次の「赤ニキビ」へと進行するリスクがあります。
【第2段階】赤ニキビ(紅色丘疹)とは?:炎症の「始まり」
赤ニキビは、白ニキビや黒ニキビの毛穴の中で、皮脂を栄養源とする**アクネ菌(C. acnes)**が増殖し、炎症が始まった状態です。医学的には**「紅色丘疹(こうしょくきゅうしん)」**と呼ばれます。
アクネ菌が増殖すると、様々な炎症を引き起こす物質を放出します。それに対して、体の免疫機能が「異物が入ってきた!」と反応し、白血球などが集まってきて戦い始めます。この戦いが、私たちが目にする「赤み」や「腫れ」の正体です。
この段階は、**ニキビあとが残るかどうかの重要な分岐点**です。ここで速やかに炎症を鎮めることができれば、瘢痕(あと)にならずに治る可能性が高まります。
【第3段階】黄ニキビ(膿疱)とは?:炎症が進行した「危険なサイン」
黄ニキビは、赤ニキビがさらに悪化し、毛穴の中に**膿(うみ)**が溜まってしまった状態です。医学的には**「膿疱(のうほう)」**と呼ばれます。
この膿は、アクネ菌と戦った白血球の死骸です。この膿が皮膚から黄色く透けて見えるため、「黄ニキビ」と呼ばれるのです。
黄ニキビは、炎症が皮膚の浅い部分に留まっている赤ニキビよりも、さらに強い炎症が起こっているサインです。この段階で適切に対処しないと、炎症が皮膚の深い部分(真皮層)にまで及び、組織を破壊して、**治った後もクレーターのような「瘢痕(ニキビあと)」を残す危険性が非常に高くなります。**
【治療の最前線】ニキビの種類で治療法は変わります
ニキビ治療は、ステージによって目的と使用する薬が異なります。日本のガイドライン[1]も、米国のガイドライン[2]も、この考え方に基づいています。
黒ニキビ(開放面皰)の治療法:ニキビの“芽”を摘む
目的は、炎症を起こす前に「毛穴の詰まり」を解消することです。治療の主役は、毛穴の角化異常を正常化する以下の薬です。
- アダパレン(ディフェリン®ゲル):毛穴の詰まりそのものを取り除きます。ガイドライン(CQ18)で強く推奨(推奨度A)されています。
- 過酸化ベンゾイル(BPO)(ベピオ®ゲルなど):角質を剥がす作用で、毛穴の詰まりを改善します(ガイドラインCQ19、推奨度A)。
- アダパレン/過酸化ベンゾイル配合剤(エピデュオ®ゲルなど):上記2つの成分が合わさり、より強力に毛穴の詰まりにアプローチします(ガイドラインCQ20、推奨度A)。
重要:この段階ではまだ炎症がないため、抗菌薬(抗生物質)の塗り薬は必要ありません。ガイドラインでも、面皰に対する外用抗菌薬は「推奨しない」とされています(ガイドラインCQ22)。
赤ニキビ・黄ニキビ(炎症性皮疹)の治療法:炎症を鎮め、跡を残さない
炎症が起きてしまった赤ニキビや、膿が溜まった黄ニキビは、瘢痕化のリスクが高い「急性炎症期」です。治療の目的は、**一刻も早く炎症を鎮め、同時にニキビの“芽”である毛穴の詰まりも治療する**ことです。
そのため、日米のガイドラインは共に、複数の薬を組み合わせる**「併用療法」**を強く推奨しています[1][2]。
- ベースの薬(毛穴の詰まりを改善):アダパレン または 過酸化ベンゾイル(BPO)、あるいはその両方(配合剤)。
- + 炎症を抑える薬(抗菌薬):アクネ菌を殺菌し、強い炎症を抑え込むために、塗り薬(クリンダマイシンなど)や、飲み薬(ドキシサイクリン、ミノサイクリンなど)を追加します。
抗菌薬は、長期間使用すると薬剤耐性菌のリスクがあるため、ガイドラインでは**原則として3ヶ月以内**の使用が推奨されています。炎症が落ち着いたら、速やかに抗菌薬を中止し、ニキビの再発を防ぐ「維持療法」(アダパレンやBPOの継続)に移行することが極めて重要です。
日本と海外のガイドライン比較:世界の常識は?
日本の「尋常性痤瘡・酒皷治療ガイドライン 2023」[1]と、米国の「米国皮膚科学会(AAD)尋常性ざ瘡管理ガイドライン 2024」[2]は、ニキビ治療の根本的な考え方において、完全に一致しています。
- 治療の土台(主役)は、**外用レチノイド(アダパレンなど)**と**過酸化ベンゾイル(BPO)**である。
- **抗菌薬の単独使用は推奨されない。**必ずBPOと併用し、耐性菌の出現を防ぐ。
- 炎症が治まった後も、再発予防のための**「維持療法」**(アダパレンやBPOの継続)が不可欠である。
違いは、主に保険適用の有無です。例えば、米国では重症の黄ニキビや結節・嚢腫に対し、**イソトレチノイン(内服レチノイド)**が強く推奨されますが、日本では未承認です。だからこそ、日本では、そうなる前の**「白ニキビ・黒ニキビ」の段階から、保険適用の塗り薬で徹底的に治療を開始すること**が、将来のニキビあとを防ぐために何よりも重要なのです。
ニキビに関する Q&A コーナー
A1. **絶対にやめてください。** 毛穴パックや指で無理に角栓を押し出す行為は、毛穴の周りの皮膚を傷つけ、バリア機能を破壊します。その結果、かえって毛穴が開き、炎症を引き起こし、赤ニキビや黄ニキビへと悪化する原因になります。黒ニキビの正しい治療は、毛穴の詰まりを「溶かし出す」アダパレンやBPOの塗り薬です。
A2. **これも絶対にダメです。** 黄ニキビを無理に潰すと、膿や細菌が皮膚の深い部分(真皮層)に飛び散り、炎症が拡大します。これにより、皮膚組織が大きく破壊され、治った後も**クレーターのような深い瘢痕(ニキビあと)が残る最大の原因**となります。
A3. 推奨されません。抗菌薬は「炎症」を抑えますが、ニキビの根本原因である「毛穴の詰まり(面皰)」には効果がありません。そのため、抗菌薬だけで治療すると、一時的に赤みは引いても、毛穴は詰まったままなのですぐに再発します。さらに、長期間使用すると薬剤耐性菌を生み出すリスクがあります。必ず、毛穴の詰まりを改善するアダパレンやBPOと併用することが、日米両ガイドラインで強く推奨されています[2]。
長田こどもクリニックのニキビ治療:皮膚の専門家として、親子に寄り添う
お子さまのニキビ治療は、根気のいる長い道のりになることもあります。特に、症状が良くなった後も治療を続ける「維持療法」は、ご本人とご家族の深い理解と協力が不可欠です。当院は、アトピー性皮膚炎の治療で培った、慢性的な皮膚の炎症をコントロールするノウハウと、お子さまへの丁寧なスキンケア指導、そして保護者の皆さまへのきめ細やかな説明の経験を、ニキビ治療にも最大限活かしていきます。
お子さま一人ひとりの肌の状態、ライフスタイル、そして悩みに耳を傾け、ご本人とご家族が納得して、前向きに治療を続けられるよう、最適な治療計画を一緒に立てていきます。「こんなことで受診していいのかな?」などと、ためらう必要は全くありません。
部活や塾で忙しいお子さまも、お仕事でお忙しい保護者の方も、安心して受診できるよう、当院は柔軟な診療体制を整えています。
- 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
- 土曜日も、13時まで診療
- クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備
杉並区荻窪で、いつでも頼れるかかりつけ医として、皆さまをお待ちしています。
参考文献
長田こどもクリニック
杉並区荻窪の小児科・アレルギー科

