ブログ

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎、症状と原因。乳児湿疹との違いは?|杉並区・荻窪・小児科

 

 

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎、症状と原因。乳児湿疹との違いは?最新治療とスキンケア|杉並区・荻窪・小児科

当院のブログが目指すこと:皮膚科治療への強いこだわり

私たち杉並区荻窪の長田こどもクリニックは、小児アトピー性皮膚炎の治療に長年力を入れてまいりました。インターネットで医療情報を検索する中で、多くの情報が個人の経験談であったり、医学的根拠が不明瞭であったりして、「どれが本当に信頼できる情報なのか分かりにくい」と感じたことはありませんか?

当院のブログは、そうした保護者の皆さまの不安に応えるため、明確なエビデンス(科学的根拠)に基づいた情報発信を心がけています。この記事も、「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」[1]「米国皮膚科学会(AAD)ガイドライン」[2]など、最新の信頼できる情報を基に、他の医療者から見ても妥当だと思っていただけるレベルで、「赤ちゃんのアトピー」について徹底解説します。

はじめに:「乳児湿疹」が長引く…もしかしてアトピー?

赤ちゃんの顔や体にポツポツと湿疹ができると、保護者の皆さまは「これは乳児湿疹?それとも、もうアトピーなの?」と、まず最初の疑問に直面します。この2つは、しばしば混同されがちですが、その境界線は**「持続性」**と**「かゆみ」**にあります。

  • 乳児湿疹(乳児脂漏性皮膚炎など):一般的に、生後間もなくから3ヶ月頃までによく見られる、皮脂の分泌が盛んなことなどが原因の一時的な湿疹を指します。適切なスキンケアで改善することが多いのが特徴です。
  • アトピー性皮膚炎:乳児湿疹が治るべき時期を過ぎても(一般に生後2〜3ヶ月以降も)改善しない、または一度良くなっても「良くなったり悪くなったりを繰り返す、かゆみのある湿疹」を指します。

つまり、保護者の皆さまが「乳児湿疹が長引いている」と感じているその症状が、まさにアトピー性皮膚炎の始まりである可能性が非常に高いのです。「乳児湿疹だから」と思っていても、かゆみを伴う湿疹が繰り返し起こるようであれば、それは「体質」として片付けるべきではありません。それは、アトピー性皮膚炎という、適切な診断と治療(管理)を必要とする慢性的な皮膚の病気である可能性があり、早期の対応が重要になります。

アトピー性皮膚炎とは?診断の根拠となる3つの特徴

アトピー性皮膚炎は、血液検査や特定の検査だけで診断できるものではありません。日本の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」では、以下の3つの特徴をすべて満たす場合に診断されます[1]

  1. そう痒(かゆみ):何よりもまず、「かゆみ」があることが大前提です。
  2. 特徴的な皮疹と分布:
    • 症状:ジクジクした湿疹(急性病変)や、カサカサしてゴワゴワした湿疹(慢性病変)が混在します。
    • 分布:赤ちゃん(乳幼児期)では、おでこ、目のまわり、口のまわり、ほっぺたに始まり、ひどくなると頭や体幹、手足にまで広がります。
  3. 慢性・反復性の経過:一時的に良くなっても、すぐにぶり返すことを繰り返します。(乳児では2ヶ月以上続く場合が目安です)

これらの特徴から、医師が総合的に診断します。

なぜアトピーになる?最新医学で分かってきた2つの根本原因

「なぜ、うちの子がアトピーに?」と原因を知りたい保護者の方は非常に多いです。かつては原因不明とされていましたが、近年の研究で、大きく2つの要因が関わっていることが分かってきました。

① 皮膚の「バリア機能」の異常

健康な皮膚は、レンガとセメントのように細胞と脂質が隙間なく並び、外部の刺激(アレルゲン、細菌、乾燥など)から体を守る「バリア」の役割を果たしています。しかし、アトピー性皮膚炎のお子さまの多くは、このバリア機能が生まれつき弱いことが分かっています。特に、皮膚の天然保湿因子(NMF)の主成分である「フィラグリン」というタンパク質を作る遺伝子の異常などが関係しています[2]

バリアが壊れた皮膚は、家で例えると「壁に穴が空いた状態」です。そこから水分が逃げて乾燥し、外からはアレルゲンや刺激物が簡単に入り込んできてしまいます。

② アレルギーを起こしやすい「免疫の異常」

皮膚のバリアが壊れ、そこから異物(アレルゲンなど)が侵入すると、体の免疫システムが過剰に反応してしまいます。特に、アトピー性皮膚炎の方の体質は、「Th2(Tヘルパー2)」というタイプの免疫が優位になりやすく、これが過剰な炎症反応を引き起こし、強いかゆみや湿疹の原因となります。

つまり、アトピー性皮膚炎は、**「壊れたバリア」**と**「過敏な免疫」**という2つの要因が絡み合って発症する、体質的な病気なのです。

【最重要】アトピー治療の本当のメリット:食物アレルギーや喘息の予防

「たかが湿疹」と放置してはいけない最大の理由が、ここにあります。近年の研究で、乳児期のアトピー性皮膚炎が、その後の**食物アレルギー**や**気管支喘息**の発症と深く関わっていることが分かってきました。

理論①:「アレルギーマーチ」の進行を食い止める

アトピー性皮膚炎のお子さまが、成長と共に、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎(花粉症)と、次々にアレルギー疾患を発症していくことを「アレルギーマーチ」と呼びます。この“行進”のスタート地点が、乳児期のアトピー性皮膚炎です。

この行進を食い止める、つまり**将来の喘息や鼻炎の発症を予防する**ために、スタート地点である皮膚の炎症を早期に、かつ徹底的に抑え込むことが重要であると考えられています。ただし、「アトピー治療で喘息への移行率が何%から何%に減らせる」という明確な長期エビデンスは、現時点では確立されていません。しかし、将来のリスクを減らすために、今できる最善の策が、皮膚を健康な状態に保つことなのです。

理論②:「食物アレルギー」の発症を防ぐ(二重抗原曝露仮説)

かつては「卵や牛乳などの食物アレルギーが“原因”で、アトピー性皮膚炎という“結果”が起こる」と考えられていました。しかし、現在では、この因果関係は**全く逆**であることが分かっています。

これは「二重抗原曝露仮説」と呼ばれ、食物アレルギーの発症メカニズムは以下のように考えられています[3]

  • 経皮感作(悪いルート):アトピー性皮膚炎でバリア機能が壊れた皮膚から、空気中やホコリに含まれるごく微量な食べ物のカス(抗原)が侵入すると、体はそれを「敵」と認識し、アレルギーの準備状態(感作)に入ってしまいます。
  • 経口免疫寛容(良いルート):同じ食べ物でも、腸から消化・吸収されると、体はそれを「栄養」と認識し、アレルギー反応を起こさないようにする「免疫寛容」という仕組みが働きます。

つまり、**アトピー性皮膚炎による「皮膚バリアの破壊」こそが、食物アレルギーを引き起こす“引き金”だった**のです。

【重要】「保湿だけ」では食物アレルギーは予防できない

「では、赤ちゃんの頃から保湿剤をたっぷり塗れば、アトピーも食物アレルギーも予防できるのでは?」と考え、世界中で大規模な臨床研究が行われました。しかし、日本のPETIT研究[4]や、イギリスのBEEP研究[5]などでは、**「新生児期からの保湿剤の塗布“だけ”では、食物アレルギーの発症を予防できなかった」**という、予想外の結果が報告されました。

これは、保湿剤という「人工のバリア」だけでは、アトピー体質の子どもに起こる「皮膚の炎症」を完全に抑え込むことはできなかった、ということを示唆しています。この事実から、私たちは、**保湿だけでなく、ステロイド外用薬などで「炎症」を早期から積極的に治療し、皮膚を“本当に健康な状態”に戻すこと**こそが、アトピー性マーチを食い止めるために最も重要であると考えています。

治療の2本柱:「炎症を抑える」ことと「肌を守る」こと

前述の原因と最新の知見を踏まえ、アトピー性皮膚炎の治療は、この2つの原因に同時にアプローチする「2本柱」で行うことが、国内外のガイドラインで強く推奨されています。

① 炎症をしっかり抑える(ステロイド外用薬)

アトピー性皮膚炎の症状(赤み、かゆみ、ジクジク)は、皮膚の「火事」です。この火事を消すために最も有効で、世界の標準治療とされているのが**「ステロイド外用薬(塗り薬)」**です[1][2]

「ステロイドは怖い」というイメージから、使うのをためらったり、ごく少量しか塗らなかったりする保護者の方がいらっしゃいますが、それは**大きな誤解**です。火事が起きているのに少量の水で消火しようとしても、火はくすぶり続け、かえって被害が広がってしまいます。皮膚の炎症も同じで、中途半端な治療は症状を長引かせ、皮膚をゴワゴワさせ(苔癬化)、結果的により多くの薬が長期間必要になるという悪循環に陥ります。

小児科医の指導のもと、**適切な強さ**のステロイドを、**十分な量**(FTU: フィンガーチップユニットという指標を用います)、**決められた期間**しっかり塗って、一気に火事を鎮火させることが、最も安全で効果的な治療法です。

② 肌を守り、バリア機能を補う(保湿剤)

火事が鎮火しても、焼け跡(=壊れたバリア)はそのままです。この壊れたバリアを修復し、新たな火種(アレルゲンの侵入)を防ぐのが**「保湿剤」**の役割です。アトピー性皮膚炎の治療において、保湿剤は「おまけ」ではなく、ステロイド外用薬と並ぶ、もう一方の主役です。

お風呂上がりなど、皮膚が水分を最も失いやすいタイミングで、**たっぷりと**(皮膚がテカるくらい)保湿剤を塗ることで、人工的にバリアを作り、皮膚の乾燥と外部からの刺激を防ぎます。これを毎日欠かさず続けることが、炎症のない「ツルツルの肌」を保つための土台となります。

症状を繰り返さないための「プロアクティブ療法」という考え方

従来の治療は、湿疹が赤くなってからステロイドを塗る「リアクティブ(対症)療法」が中心でした。しかし、この方法では、一度良くなっても、薬をやめるとすぐに再発するという「いたちごっこ」になりがちでした。

そこで、現在のアトピー治療の主流となっているのが**「プロアクティブ(寛解維持)療法」**です[1]。これは、ステロイド外用薬でいったんツルツルの状態(寛解)にした後、**症状が出ていないきれいな状態の皮膚にも、週に2〜3回、予防的にステロイドや非ステロイドの抗炎症薬(タクロリムス軟膏など)を塗り続ける**という治療法です。

これにより、目に見えないレベルの小さな炎症(微小炎症)を抑え込み、症状が再発するのを防ぐことができます。一見、薬を長く使っているように見えますが、結果的に使用するステロイドの総量は減り、何よりも「かゆみのない快適な生活」を長く維持できることが、多くの研究で証明されています。

赤ちゃんのアトピー Q&Aコーナー

Q1. アトピーの原因は、私が食べたものや母乳ですか? 除去食は必要?

A1. **いいえ、違います。** 上記(セクション4)で解説した通り、因果関係は逆で、**「アトピーによる皮膚バリアの破壊が原因で、食物アレルギーになる」**と考えられています。医師の診断に基づかない、自己判断での食事制限は、赤ちゃんの成長を妨げるリスクがあり、ガイドラインでも推奨されていません。まずは皮膚の炎症をしっかり治すことが最優先です。

Q2. 赤ちゃんのアトピーは、いつか治りますか?

A2. 多くの場合、**年齢とともに軽快します。** 特に乳児期に発症したアトピー性皮膚炎の多くは、適切なスキンケアと治療を続けることで、3歳頃まで、遅くとも小学校入学頃までには、症状がほとんど出なくなることが多いです。ただし、「アトピー体質」自体が完全に消えるわけではなく、適切なスキンケアは継続する必要があります。

Q3. お風呂や石鹸はどうすればいいですか?

A3. 汗や汚れは皮膚への刺激となるため、**毎日お風呂(またはシャワー)に入れて、石鹸をよく泡立てて、手で優しく洗ってあげてください。** ゴシゴシこするのは厳禁です。洗い流した後は、清潔なタオルで優しく押さえるように水分を拭き取り、**皮膚が乾ききる前の3〜5分以内**に、処方された保湿剤と薬を塗ることが非常に重要です。

長田こどもクリニックの考え方:アトピー性皮膚炎は「管理する」病気です

アトピー性皮膚炎は、高血圧や糖尿病と同じ「慢性疾患」です。私たちは、「治す」というゴールよりも、「症状のない快適な生活を、いかに長く維持するか」という**「管理(コントロール)」**を重視しています。これには、ご家族の深いご理解と、日々の根気強いスキンケアが不可欠です。

当院は、小児アトピー性皮膚炎の治療に長年力を入れてきました。その経験から、私たちは、保護者の皆さまが治療で挫折しそうになるポイント、不安に感じるポイントを熟知しています。私たちは、単に薬を処方するだけでなく、プロアクティブ療法という最新の治療計画を一緒に立て、具体的な塗り方やスキンケアの方法を丁寧にお伝えし、お子さまとご家族が前向きに治療を続けられるよう、二人三脚でサポートします。
当院ではお子様の痒みのない生活を送り、アレルギーマーチをしっかりと抑え込むことを目標にコントロールします。保険医療のHPではBefore-Afterの写真など掲載することが禁止されています。ですので当院に来院され改善した方々の感想などはGoogle口コミなどをみていただければと思います。

お忙しい保護者の皆さまへ:当院の診療体制

アトピー性皮膚炎の治療は、定期的な通院による医師のチェックが欠かせません。当院は、お仕事などで日中の受診が難しい保護者の皆さまにも安心して通院を続けていただけるよう、柔軟な診療体制を整えています。

  • 平日(月〜金)は、夜20時まで診療
  • 土曜日も、13時まで診療
  • クリニック前に、無料の専用駐車場を6台完備

杉並区荻窪で、お子さまの肌の悩みに、いつでも寄り添います。「これってアトピーかな?」と感じたら、お一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。

長田こどもクリニック
杉並区荻窪の小児科・アレルギー科

TOPへ